独立してお店を持ちたい、そう思われたときに自力で出店する場合と、フランチャイズに加盟する場合を比較検討されることもあるかと思います。
それぞれに有利な点や注意点もありますが、この記事では主に税制面や税引き後利益面に注目し、フランチャイズに加盟する場合と、自力で出店する場合の特徴を比較していきます。
- フランチャイズ固有の費用による税制面のメリット
- フランチャイズ加盟は経営安定化に有利な可能性
- 自力出店では売り上げに対する税引き後利益が多い見込み
目次
税制上はフランチャイズ加盟も自力出店も「個人事業主」

まずは、フランチャイズに加盟した場合と、自力で出店した場合の支払う税金を確認してみましょう。
法律上では、個人経営であるか、法人経営であるかの視点で支払う税金が決まります。法人化していなければ、フランチャイズ加盟も自力起業も個人事業主に分類されます。
- 個人事業主の支払う主な税金は次の4種類。
- 所得税:一年間の所得によって納税額が決まる国税。
- 住民税:確定申告をもとに自治体に支払う地方税。
- 個人事業税:事業内容によって支払う地方税。一年間の所得が290万円までは非課税。
- 消費税:取引金額に課される国税。売り上げが1,000万円までは非課税。
この記事では、確定申告に最も影響のある所得税の納税額について書いていきます。
節税効果が期待できるのはフランチャイズ加盟
税金の種類は同じ。では、納税額に関してフランチャイズに加盟した場合と、自力出店した場合で違いはあるのでしょうか。
フランチャイズ契約をした場合、フランチャイズ契約の内容にもよりますが、一般的にフランチャイズ本部に次の2つを支払うことになります。
- フランチャイズ加盟時の加盟金
- 事業を行っている期間のロイヤリティ
この2つは最終的に費用として計上できるため、課税所得を減らす効果があります。それぞれの会計処理の方法を簡単に説明します。
フランチャイズ加盟時の加盟金
フランチャイズ加盟時に支払う加盟金は、20万円以上の場合「繰延資産」として扱われます。繰延資産に計上された加盟金は、一定の期間で均等に費用として計上し償却していきます。
フランチャイズ契約の加盟金について、償却期間は契約期間が5年より短い場合は契約期間、5年以上の場合は5年間と決められています。
たとえば、加盟時に20万円の加盟金を支払った場合、4万円を5年間経費として計上できることになります。
なお、加盟金が20万円に満たない場合は、全額を開業年の費用として計上できます。
フランチャイズ本部へ支払うロイヤリティ
フランチャイズに加盟すると、経営サポート料としてフランチャイズ本部へロイヤリティを支払うことが一般的です。フランチャイズ加盟者が本部に支払ったロイヤリティは、その年の費用として全額計上できます。
結果、費用として計上する金額が増える分、課税所得が減り、所得税額や住民税額は少なくなる可能性があります。
所得税額の比較
実際にどのくらい所得税額が変化するのか例を挙げて試算してみましょう。
平成30年度国税庁申告所得税標本調査結果によると、納税した個人事業主のうち約40%が課税所得300万円から1,000万円の範囲です。この値を参考値として、ロイヤリティ以外の利益が300万円から1,000万円の場合を想定して試算してみます。
この調査は納税した個人事業主の課税所得の集計ですので、厳密にはロイヤリティ以外の利益の統計ではありませんが、集中している課税所得帯を参考値として使用しています。
ロイヤリティ額の計算方法は契約によって異なりますので、この記事では次の2種類を使用しました。
・売上に関わらず、毎月10万円の場合
・利益の10%の場合
所得税額は国税庁の所得税の税率の値をもとに算出し、次のグラフにまとめました。

所得税額は、自力出店の場合が一番高い結果となりました。また、利益が増えるにしたがって、フランチャイズ契約の所得税額との差が大きくなっています。
自力出店についで所得税額が高くなったのは、利益の10%がロイヤリティの場合。
ロイヤリティが利益の10%の場合の所得税額は、利益300万円付近では自力出店の所得税額に近い値でしたが、利益が増えるにしたがい、所得税額は徐々にロイヤリティ月額10万円の場合に近づいていきました。
今回の例では、ロイヤリティの契約内容によって所得税額の差はあるものの、自力出店と比べるとフランチャイズ契約の方が所得税額は抑えられていました。
安定した経営を期待できるのはフランチャイズ加盟

事業を始めるにあたり、自力で出店しようとすると、開店時の手続きや初期投資計画など手間がかかります。また、事業で経常的に利益を上げることも課題となるでしょう。
具体的には、次のような点が懸念材料として思い浮かぶのではないでしょうか?
- 初期投資計画や、仕入先確保などの開店準備
- 新規顧客開拓
- 定期的な売り上げの確保
フランチャイズ契約の場合は、これらの対策として本部のサポートを得ることができます。
開店準備は本部のネットワークを利用して少ない労力で行えるのが一般的ですし、経営の面でも集客や売り上げ向上のノウハウを教えてもらえます。また、自力出店と比較してネームバリューがあることも多いので、新規顧客も得やすい傾向にあります。
フランチャイズの方が比較的ローリスクで事業を行える可能性があると言えそうです。
売上高が同じなら自力出店の方が資金を残せる可能性あり
では、売上に与えるロイヤリティの影響はどの程度なのでしょうか?この章では、納税後手元に残る利益を比べてみたいと思います。
先ほどの所得税額を算出した抽出条件と同じケースで納税後に手元に残る利益を算出しました。自力出店とフランチャイズ契約でそれぞれ次のように計算し、グラフにまとめています。
- 自力出店の場合:利益と所得税額の差
- フランチャイズ契約:利益から所得税額とロイヤリティ額を引く

納税後手元に残る資金は、自力出店が最も多い結果となりました。ついで利益の10%のロイヤリティの場合が残る資産が多く、最も少ないのは月額10万円のロイヤリティの場合です。
今回の試算では前述の所得税額も納税後に手元に残る資金も、自力出店が最も高額となりました。また、ロイヤリティが発生する2つの例でも、所得税が高額の契約の方が残る資金は大きくなりました。
今回のケースは、所得税額の差を越えてしまうほど、収入に対してロイヤリティの負荷が大きかったものと考えられます。
ただし、ロイヤリティの支払い契約は個々に異なりますので、一概にロイヤリティが発生すると手元に残る資金が少なくなるわけではありません。実際に契約する際、この点にご注意ください。
まとめ
フランチャイズ加盟には、本部サポートという強い味方があります。とくに集客に関しては、本部のもつネームバリューは効果的でしょう。節税という意味でも自力出店よりメリットがあるといえます。
しかし、ロイヤリティそのものが高い場合、手元に残る利益が少なくなる可能性も。フランチャイズ契約を結ぶ場合には、ロイヤリティを支払う資金は確保できるかどうか、本部のサポート内容が求めている内容と合っているかなど、事前に確認することが大事だといえます。
節税効果の期待できるフランチャイズ契約。支払うロイヤリティ以上のメリットが得られるかどうかも検討してみてはいかがでしょうか。
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