投資を始めたいと思った時に生じる疑問
“どのくらい投資に回したらいいの?収入の何%?貯蓄の何%?”
答えは…ありません!
ひとりひとり収支が異なるので、金額も割合も人それぞれ。自分だけの最適なバランスを見つけましょう。
- ひとりひとり投資に回せる金額は違う
- 資産のグループ分け~投資は余裕資金から~
- 自分に合った投資金額を考えよう
目次
投資に回す金額に正解は無い!

いきなりですが、ここに投資を始めたいと思っている2人がいたとします。
1か月あたりの収支状況は次の通りです。
収入 | 生活費 | 貯蓄 | |
Aさん(独身) | 30万 | 20万 | 10万 |
Bさん(3人家族) | 30万 | 25万 | 5万 |
もし投資割合を収入の20%と決めてしまったらどうなるでしょう?
収入 | 生活費 | 投資額 | 貯蓄 | |
Aさん(独身) | 30万 | 20万 | 6万 | 4万 |
Bさん(3人家族) | 30万 | 25万 | 6万 | できない |
Aさんは投資と貯蓄を並行して行えますが、Bさんは貯蓄ができない上、生活費と投資額の合計が収入を上回り赤字になってしまっています。
このように同じ収入でも収支状況が違えば、投資に回せる金額も違ってきます。
つまり、投資額の目安は収入の何%という決め方はできないのです。
貯蓄はできていますか?
決まった目安が無いとなると、自分なりの目安を作っていく必要があります。
投資にはリスクが伴いますので、生活費などのお金を回すわけにはいきませんよね。そこでまずは、自分がふだんどのくらいお金を使っていて、使わないお金=貯蓄に回せるお金がいくらなのか把握することが大切です。
投資を始める第一歩は貯蓄をすること。貯蓄がまったくできていない方は、無駄遣いはしていないか?削れる出費はないか?など、支出を見直して貯蓄をするところから始めましょう。
投資は余裕資金から。資金のグループ分けをしよう
自分の資産状況を把握するために資産を『生活費』『生活防衛費』『近い将来使う貯蓄』『余裕資金』の4つにグループ分けしてみましょう。こうすることで投資に回せる金額が見えてきます。
1:生活費
毎日の生活を送るうえで欠かせない“すぐに使うお金”です。家賃、食費、光熱費、通信費、保険料など毎月固定でかかってくる費用が挙げられます。
このグループは生きていくうえで欠かせない資金なので、預貯金などの現金で保管をしておきましょう。
2:生活防衛費
生活防衛費とは、不測の事態が起こったときや、臨時の支出が必要になったときのための緊急資金を指します。
人生何が起こるかわかりません。会社が倒産したり病気になったりして働くことができず、収入がゼロになる期間があるかもしれません。災害で家が被害を受ければ大きな支出が必要になるかもしれません。
そんな状況でも生活は続きます。
保険金や補償を受けられる場合でも、現金はすぐに支給されない場合がほとんどです。そんな時のために備えておく資金が生活防衛費です。
FP協会では生活費の3か月~1年分を目安としています(毎月の生活費が20万円なら最低60万円)。貯蓄とは別に、すぐに現金化できる預貯金などで備えておきましょう。
3:貯蓄
それでは、生活費と生活防衛費を除いた貯蓄すべてを、投資に回してしまっても良いでしょうか?
答えはNOです。
近いうちに使う予定のある貯蓄まで投資に回してしまうと、使いたい時に目減りしていて金額が不足してしまうリスクがあるからです。
投資の世界では長期運用が基本といわれています。絶対ではありませんが、株価は上下を繰り返しながら成長とともにだんだんと上がっていきます。言いかえると、長期的に見れば上がる相場も、短期的に見れば下がる可能性も高いということです。
そこで貯蓄をさらにグループ分けをして、投資に回せるお金をしっかりと把握していくことが大切になります。
3-1:近い将来使う貯蓄
住宅購入費や教育費、車の購入など、使う時期や金額の予定がある程度ついている資金です。
旅行などのために貯めているお金もここに分類するといいでしょう。
ライフイベントと密にかかわってくる部分も大きいので、ここは投資ではなく堅実に預貯金などで蓄えておくことをお勧めします。
近い将来に使うとはいえ、今すぐに使わないのだからどうしても運用に回したい!というのであれば、元本保証のある定期預金や、国債などの低リスクの商品で運用すると安心です。
3-2:余裕資金
特に使う予定の無いお金や、遠い将来のために備えている貯蓄です。このグループが投資に使えるお金です!
しばらくは特定の用途がないため、一時的に相場が下落しても持ち直すまで待つ余裕があるお金ともいえます。ある程度投資期間を取れる方は、老後資金もこの余裕資金に分類してもいいでしょう。
(リタイアメントが近い方は近い将来使う貯蓄に分類しましょう)
この中から、目標や目的を決めて投資に回していきます。
繰り返しになりますが、投資にはリスクが伴います。最悪ゼロになっても大丈夫!と思える金額=余裕資金で投資をスタートさせましょう。
毎月の収入もグループ分けする習慣をつけよう
今ある資産のグループ分けができたら、その後の収入も毎月グループ毎に配分していきましょう。
生活防衛費は維持をしていけばいいので、基本は生活費と貯蓄に分けていきます。そして貯蓄に回す分を考える際に、近い将来使う資金と余裕資金に回すお金の配分を考えると、収入の中から投資に回すことのできる自分だけの最適なバランスが見えてきますよ。
自分に合った投資金額とは?

投資に回すことのできる自分の余裕資金額がわかり、いざ投資を始めようと思った時、次に生じるのが「何にいくら投資をすればいいのか?」という疑問です。
貯蓄と投資の適正割合がひとりひとり異なるように、年齢やリスク許容度、目的によって投資金額も人それぞれです。投資を始める時は、投資の目的や目標を決めて、そこに向かって運用金額や期間、利回りを考えていきましょう。そうすることで、自分に見合った投資金額も把握できるようになります。
今回は、将来世界一周クルーズ旅行に行くための資金500万円を準備したい場合の投資金額という設定のもと、さまざまなケースごとに目安の金額を考えていきます(※毎月積立型の投資方法とします)。
リスク許容度からみる投資金額
投資の世界におけるリスクとは「増減の振れ幅」を指します。つまりリスクが大きいというのはプラスになるときは大きく増え、マイナスになるときは大きく減るということです。
自分はどのくらいのリスクを許容できるのか、リスク許容度を診断できるサイトなどを活用し把握しておきましょう。
なおリスク許容度は大きく3つに分けられます。
- できる限りリスクを抑えたい「安定志向」
- 中間の「バランス志向」
- リスクはあるがリターンも大きい「積極志向」
大手証券会社などのHPを見てみると、リスク許容度と利回り、運用商品の関係性は以下のようになる場合が多いようです。
リスク許容度 | 利回り(目安) | 運用商品(例) |
安定志向 | ~3% | 預貯金、債券、MRFなど |
バランス志向 | 3~5% | 投資信託、国内株式 など |
積極志向 | 5%~ | 外国株式、FX、投資信託(新興国)、不動産など |
利回りが異なる次の2つのパターンでは、投資金額にどのような違いが出てくるでしょうか?
10年後に世界一周に行きたいと考えている場合(投資期間10年間)
A:安定志向、利回り2%
B:積極志向、利回り5%
500万円に到達するために必要な毎月の投資金額は
A:38,000円
B:33,000円
となります。
※ 参考:SBI証券「積立シミュレーション」を使用して試算
同じ目標金額・運用期間の場合、利回りが大きいほど必要な投資金額は少なくなりますが、その分リスクも大きくなります。
投資期間からみる投資金額
目的までの期間や、現在の年齢によっても投資金額は変わってきます。
投資期間が長いと、その分運用益も大きくなるため、必要な投資元本は少なくなります。一方投資期間が短い場合、なるべく短期間で資金を増やしたいという理由から、ついリスクを大きくとったり、投資金額を大きくしたりしてしまいがちです。
しかし前項で書いたように、投資は長期的に見れば上がる相場も短期的に見れば下がる可能性も高くなります。投資期間が短い場合でも、あまり多くの金額を投資に回してしまうのはお勧めできません。余裕資金の範囲を超えないように気をつけましょう。
投資期間が異なる次の2つのパターンでは、投資金額にどのような違いが出てくるでしょうか?
60歳の定年の時に世界一周に行きたいと考えている場合
A:現在30歳(投資期間30年)、バランス志向(利回り4%)
B:現在45歳(投資期間15年)、バランス志向(利回り4%)
500万円に到達するために必要な毎月の投資金額は
A:8,000円
B:21,000円
※ 参考:SBI証券「積立シミュレーション」を使用して試算
投資はいつ始めても遅いということはありませんが、年齢が上がるにつれて投資にとれる期間も短くなっていきます。同時に、万が一株価の下落によって資金が減ってしまった場合に挽回できる時間も減ってしまいます。
そのようなリスクがあることを把握したうえで、どのくらいの投資金額を費やすことができるかといった視点も持っておきましょう。
シミュレーションをしてみよう
投資に費やせる期間、リスク許容度、目的は人それぞれですので、投資金額も投資方法も目標に合わせて変わっていきます。また明確な目標はまだ無いけれど投資を始めたいという方もいるでしょう。
どんな場合でも、一度シミュレーションをしてみることをお勧めします。
目標金額から投資元本を計算したり、投資元本から到達額を試算したりできる金融電卓というものがあります。インターネット上でも金融電卓や積立シミュレーターといった名目で、無料で利用できるものもあるので活用すると良いでしょう。
試算した結果が、自分の余裕資金の範囲内でできるものかを確認し、超えているようであれば設定を見直しながら、自分にあった金額を見つけてみて下さい。
まとめ
投資は無理のない範囲で自分に合った方法で行っていくことが大切です。
周りがいくらだから、平均がこうだからといったことではなく、自分の資産や収支状況を客観的に把握しましょう。
今回の記事を参考に資産のグループ分けを行いながら、自分にとって最適な投資のバランスや金額を見つけてみて下さい。
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