会社員で働きながら独立を考えている人の中には、フランチャイズに加盟することを検討している方もいるのではないでしょうか?
コンビニエンスストアやスーパーの経営形態として、フランチャイズというシステムは一般に普及しています。
フランチャイズの加盟先を選ぶにあたって、失敗を避けるにはどのような点に注目すればよいのか、そのポイントを解説します。
- フランチャイズの業態がわかる
- フランチャイズを選ぶ際のポイントがわかる
- フランチャイズを選ぶ際に避けるべき注意点がわかる
目次
フランチャイズの基礎知識

まずはビジネスにおいて「フランチャイズとは何か」について簡単に触れたいと思います。
「フランチャイズ」の意味
いろいろな英和辞典で「franchise」を調べると、その多くに名詞で「一手販売権」という意味が載っています。この意味から転じて「フランチャイズ」とは、「事業者(本部)が他の事業者(加盟店)に販売の権利等を許可する契約を結ぶ事業形態」を指します。
事業者である本部は加盟店に商品の販売などを行う権利を与え、加盟店は本部に「ロイヤリティ」と呼ばれる権利使用料を支払います。本部から経営のノウハウなどのバックアップを得ることもできますが、資本や労働力の投入は加盟店自身が行わなければなりません。
大きな分類は3つ
ビジネスモデルを検討するにあたって「業種」と「業態」という言葉があります。
新規で開業するときはこの2つを組み合わせて、何を選択するかを最初に検討するとよいでしょう。
「業種」とは取扱商品の種類(八百屋や酒販店、電器店など)、「業態」とは営業形態の区分(百貨店、スーパーマーケット、コンビニエンスストアなど)を指します。
これを踏まえて、フランチャイズを大きく分類すると以下の3種類になります。
小売業
生産者や卸売業者から仕入れた商品を販売する業態で、コンビニエンスストアやスーパーが代表格です。他に中古品を取り扱う買取販売や、靴や眼鏡・コンタクトレンズなど特定の商品を手がける専門店もあります。
店舗を構えて経営することが多いため、限られたスペースで陳列と在庫管理を行う必要があります。
飲食業
ファーストフード、カフェ、レストラン、居酒屋などが該当します。有名なチェーン店のフランチャイズに加入すれば、初めからある程度の集客が期待できるというメリットがあるでしょう。キャッシュフローもわかりやすい業態です。
参入する人数が多いので入れ替わりが激しく、ホールと厨房でもマネジメント方法が異なります。
サービス業
文字通り「サービス」を提供するビジネスで、介護や学習塾、ハウスクリーニング、マッサージなど多岐に渡ります。接客が大きな割合を占めるため、コミュニケーション能力が重要とされる仕事です。
サービスという無形の対象を取り扱う性質上、問題解決には何が求められているか推測するアプローチが必須になります。たとえば代行サービス業であれば、顧客が時間・スピードを求めているのか、品質を求めているのかを判断するなどです。
フランチャイズを選ぶポイント

フランチャイズを選ぶとき、最初は予想される収益や参入のしやすさに注目するのではないでしょうか。確かにどちらも重要ですが、ここではフランチャイズを社会的視点から、どのような点に注目して選んだらよいのかポイントを解説していきます。
本部と良好な関係を築けるか
まず第一に、本部の経営方針や企業理念に賛同できるかどうかを確認しましょう。
フランチャイズ契約において、本部と加盟店(=自分)は対等の立場です。いわばビジネスパートナーとなる位置付けです。
そのため、ビジネスに対する姿勢が一致していなければ、関係を継続することは難しくなります。加盟希望者への説明資料や説明会などで、本部のメッセージと自分の理念や目標が重なるかどうかを確認しましょう。
次に重要な点として、サポート体制の充実度が挙げられます。
経営ノウハウの提供に加えて、事業計画書の作成や融資窓口の紹介などをサポートしてくれると安心ですね。
本部からサポートを行う担当者は一般に「SV=スーパーバイザー」と呼ばれ、店舗を持つ業態であれば定期的に現場を訪れることが多いです。このSVの訪問頻度やアドバイスの具体例を事前に確認すると、本部のサポート体制が想定できると思います。
最後に「法定開示書面」で書面の内容を確認しましょう。
「中小小売商業振興法」という法律で、本部から加盟希望者には法定開示書面を交付し、フランチャイズ契約の要点を説明することが義務付けられています。
法定開示書面には本部事業者の事業内容や契約内容とともに、加盟店舗数の推移や営業実績が含まれています。加盟店が契約を解除する割合が多いようであれば、ビジネスモデル以外に問題を抱えているかもしれません。
一般社団法人日本フランチャイズチェーン協会の正会員であれば、実績やコンプライアンス等は一定の基準をクリアしている企業です。しかし「大手で有名な企業だから安心」とイメージで判断せず、自分の経営戦略と合致しているかを考えましょう。
ロイヤリティは適正か
ロイヤリティとは商標権や経営ノウハウの対価として、加盟店が本部に支払うお金のことです。期待値ではなく、より現実的な収益モデルの算出のためにも、支払うロイヤリティがどのくらいになるのか試算しましょう。
そして、算出した金額と本部のサポートはバランスが取れているか、加盟する業態の相場と著しくかけ離れていないかをチェックしてみてください。ロイヤリティが同業他社と比較して低い場合「本部の規模が小さい」「サポートが限定される」「その他の初期費用が必要」などのケースが考えられます。
ロイヤリティが低いことは一概にマイナスとはいえません。本部事業者がまだ発展段階である場合は、今後の成長が見込める業態に早期参入できるという可能性もあります。メリットとリスクのバランスから、ロイヤリティが見合った金額なのか判断しましょう。
成長分野であること
飽和状態であったり斜陽産業の分野では、厳しい状況からのスタートになることは避けられないでしょう。やはりこれからの成長が見込める業種・業態に参加する方が有利と考えられます。
たとえば中国では「外売(ワイマイ)」と呼ばれるフードデリバリーが普及しており、30代以下の利用率は90%以上と言われています。この要因としてはスマートフォンとキャッシュレス決済の普及率が高いことが挙げられます。
一方、日本ではクレジットカードの普及率は高いものの、フードデリバリーの利用は3割程度に収まっています(*)。要因や因果関係の分析については割愛しますが、日本におけるフードデリバリーの市場規模はまだ発展段階と言えるでしょう。
(*参考)2021年 フードデリバリーサービス利用動向調査(ICT総研調べ)
発展段階の業界を成長が見込めると判断する基準には、市場規模の総額や既存店舗の成長率といった数字の裏付けが必要です。加盟を検討しているフランチャイズの資料以外にも、公的な統計や経済誌の記事などから希望する業種・業態の動向を探ってみることをおすすめします。
フランチャイズを選ぶ時の注意点

ここまでは社会的視点から「こうするべき」という方向で推奨するポイントを説明しました。ここからは参入する個人側から「避けておきたい」という注意点を説明していきます。
ミスマッチはないか
フランチャイズに限らず「こんなはずではなかった」というミスマッチは、事前の想定と現実の違いから起こる場合がほとんどです。事前に本部や経験者と話し合いを重ねていても、加盟する人によっても結果は変わってくることが考えられます。
そのようなミスマッチを防ぐためには、具体的な分析が必要になります。
自分と合っているか
まず何よりも、フランチャイズの業種が自分の適性に合っているかが重要です。
人と接することの苦手な人が、カフェオーナーや学習塾講師を続けていけるでしょうか。
また、バックオフィスでの業務経験しかない人が、飲食店経営を始めるには経験不足という大きなリスクがあります。その場合は契約前にアルバイトで経験を積むなり、数ヶ月のインターン制度を導入しているフランチャイズを探す必要があるでしょう。
フランチャイズ先に合致した自分の適性を知るためには、加盟先を検討する前にキャリアの棚卸を行っておくのがよいのではないでしょうか。
適切な業態を選んでいるか
業態を選ぶときには「どんな商品を、誰に、いつ、どこで、どのように売るか」を明確にすることが大切です。
フリーで経営する場合には「いくらで売るか」も重要なポイントですが、フランチャイズの場合は売値が決まっていることも多いので、ここでは省きました。
前述した3種類の区分を見ると、どのような業態で経営するのかがおのずと決まってきます。
自分の適性とともに、上記5項目を具体的にイメージして、資金面も含め自分が業務を回せる範囲の業態を選びましょう。
モデル収益を鵜呑みにしない
フランチャイズへの加盟を募集する広告には「◯ヶ月で月商◯百万円!」など、魅力的なキャッチコピーが散見されます。しかし、このようなモデル収益はあくまで成功した場合の一例であり、全員が同じ収益を得られることを保証するものではありません。
フランチャイズの説明資料では初期費用やロイヤリティには触れていても、実際に必要になる運転資金は記載がない場合も多いです。なぜなら店舗を出す地域や周囲の競合の状況などによって変わるため、一概に金額を算出できないからです。
- 実店舗や在庫といった固定費は必要か
- 固定費が必要であればどのくらいのコストか
- リピーターを確保するための価格設定はどのくらいか
- 業界の平均とかけ離れた単価設定ではないか
- 初期投資はどのくらいの期間で回収できるか
上記のようなポイントを自分で想定したうえで、具体的な費用や収益をある程度試算して、モデル収益と比較することをおすすめします。
リターン獲得よりリスク回避
フランチャイズ契約は消費者として購買を行う契約とは異なり、クーリングオフのような解約制度は適用されません。定められた契約期間内に撤退する場合は、違約金が発生することもあります。そのため、継続できなくなるようなリスクは事前に対処することが望ましいでしょう。
将来的に大きな利益を上げたいという展望を持っていても、手元に資本金が少ない場合は小規模・少人数から始める堅実さも大切です。
初めは小さな資金・少ない利益でも、店舗数を増やすなどして徐々に利益を積み上げていけば、より大きい規模のフランチャイズ経営にチャレンジする事も可能です。
まずは自分が継続できるもので探すことを前提として、リスクを回避することを第一に考えましょう。
社会の変化と需要
既に飽和状態と思われる産業であっても、社会の変化によって特定の業態が発展することもあります。
たとえばお惣菜などの調理済みの食品を買って自宅で食べる「中食」という形態をご存じでしょうか。
新型コロナウイルスの流行により厳しい状況が続いているようですが、中食は消費税の軽減税率の対象なので、外食より安く済むというメリットがあります。
先に例に挙げたフードデリバリーであれば、新型コロナウイルスの流行によってその便利さが広く知られ時流に乗りました。
中食のように昔から存在する業態であっても、社会状況の変化に伴い隆盛も変化します。
とはいえ全く需要がなければ、ビジネスとして成立しません。
「なくなることはない」という社会の需要は必要条件で、一時の流行で終わらないか見極め、社会の変化に対応した付加価値を持てるかどうかが大きなポイントとなるでしょう。
まとめ
独立を考えた時に、全て自分で準備するよりもフランチャイズに加入する方が負担は少ないかもしれません。しかしその分、自由度が制限されたりロイヤリティが必要であるなど、契約内容によって制約を受ける部分もあります。
フランチャイズでは、本部との関係や自分の適性を見極め、商売を継続していける業種・業態を選ぶことが大切です。自分に合ったフランチャイズを選ぶために、この記事が一助となれば嬉しく思います。