会社の新規設立。株式会社と合同会社、あなたにとって有利なのは?

会社の新規設立。株式会社と合同会社、あなたにとって有利なのは?

個人事業主で利益が安定してきたら、法人化を検討することがあるかもしれません。

今回は、会社設立を検討している方に向けて、現状登記数の多い「株式会社」と「合同会社」について詳しく説明していきます。

この記事でわかることは次の3つです。

  • 会社の新規設立の大多数が株式会社か合同会社
  • BtoBの信頼性が高いのは株式会社
  • 設立費用とランニングコストを抑えたいなら合同会社

日本で設立できる会社の種類

日本で設立できる会社の種類

2021年4月現在、日本で設立できる会社は株式会社・合同会社・合名会社・合資会社の4種類です。

過去には有限会社も設立できましたが、2006年の会社法改定により新規設立することができなくなりました。過去の有限会社は株式会社に移行したか、特例有限会社として存続しています。

下のグラフは2019年に登記されている会社形態の割合を表したものです。e-Stat統計でみる日本 商業・法人登記(年計表)会社及び登記の種類別 会社の登記の件数のデータをもとに作成しました。

登記会社の割合(2019年)

出典:e-Stat 「統計でみる日本 商業・法人登記(年計表)会社及び登記の種類別 会社の登記の件数」をもとにFPサテライト作成

※ 整数未満を四捨五入したため、登記数が少ない合資会社と合名会社は0%と表示されています。

このグラフを見ると、主に株式会社・特例有限会社・合同会社の3種類で占められていることがわかります。

3種類のうち新規設立できる会社形態は、株式会社と合同会社ですから、新規設立企業の大多数は株式会社か合同会社であるといえるでしょう。

この2つの会社形態が人気の理由として、次のことが考えられます。

株式会社は信頼性が高い

登記数が最も多いことから、知名度が高いのが株式会社です。

株式会社は設立時や経営を続けるために必要な条件が多いため、そのすべてをクリアした会社として経営の安定性に信頼感があります。

合同会社は持分会社で唯一の有限責任

持分会社とは、合同会社・合資会社・合名会社の総称です。

その特徴には、株式会社と比べると比較的設立手続きが簡単であることや、出資者が「社員」となることなどがあげられます。

また、それら3つの会社形態はそれぞれ社員の責任範囲が異なっており、合資会社と合名会社の社員は「無限責任」(合資会社は一部有限責任)ですが、合同会社は社員全員が「有限責任」となります。

具体的にいいますと、会社が負債を抱えて倒産した場合、合資会社や合名会社の無限責任社員は、出資額を超えて会社の負債を返済する義務を負うことになります。

一方、合同会社の社員は出資額以上の負債を負う必要はありません。

このように合同会社には「設立手続きが簡単」「出資者の有限責任という安心感」などのメリットがあるのです。

株式会社と合同会社の概略

株式会社と合同会社の概略

株式会社と合同会社の特徴を簡単にご説明します。

株式会社の概略

株式会社の大きな特徴は出資者と経営者が別であることです。

出資者は株式を購入した投資家ですが、会社経営の意思決定は取締役会で行われます。

また、株式会社では一年間の経営状況をまとめた決算書を公開しなければならず、投資家はその決算書をもとに今後の投資について判断を行います。

合同会社の概略

合同会社の特徴は、出資者と経営者が同一であることです。

出資者が「社員」となり、経営も行います。基本的には社員全員が会社の代表として業務を行いますが、株式会社と同様に代表者を選ぶことも可能です。

なお、合同会社の「社員」は出資して経営を行う人を表しており、従業員のことではありません。

株式会社と合同会社の比較

株式会社と合同会社の比較

株式会社と合同会社を比べてみましょう。

株式会社と合同会社で同じもの

株式会社も合同会社も、法人一般に関わるもの、例えば次の二つのようなものは同じです。

税金の納付額

法人税は、法人の各事業年度の所得に対して課される税金のため、納める額に会社形態による違いはありません。

また、法人住民税・法人事業税および消費税についても、株式会社や合同会社に関わらず同額となります。

社会保険の加入

労働保険(労災保険・雇用保険)や厚生年金保険、健康保険は、原則、強制加入です。そこに、会社形態による違いはありません。

法人の厚生年金保険や健康保険の加入要件は「被用者がいるすべての事業所(社長・役員を含む)」です。

また、労働保険は「労働者を一人でも使用しているすべての事業所(社長・役員を含まない)」が加入要件となっています。

株式会社と合同会社の違い

株式会社と合同会社の違いを比較すると次の表のようになります。

 株式会社合同会社
出資者投資家社員
最高意思決定機関株主総会すべての社員の同意
代表者代表取締役すべての社員
(代表社員を決めることは可能)
利益分配株式の保有数による出資額および貢献度などで総合的に判断される
決算公告必須不要
法定初期費用約24万円約6万円

出資者への利益分配方法

株式会社の場合は株主の持ち株数によって利益が分配されます。

一方、合同会社の場合は社員の総意で決定します。そのため出資額だけではなく、社員の会社への貢献度なども加味して総合的に判断することができるのです。

法定初期費用

株式会社と合同会社の、会社設立にかかる最低限の法定費用をまとめたものが次の表になります。

 株式会社合同会社
定款用収入印紙4万円0
定款の認証手数料5万円0
登録免許15万円6万円
合計24万円6万円

※定款の謄本を取得する場合には1ページ当たり250円かかります。

(出典)
・e-Gov>第三五条「定款の認証」
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=405CO0000000224
・国税庁HP>No.7191「登録免許税の税額表」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/inshi/7191.htm
・国税庁HP>No.7141「印紙税額の一覧表」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/inshi/7141.htm
※これらの参考データを元にFPサテライトが作成

株式会社では定款の認証にかかわる費用がかかります。

定款を電子文書で作成した場合は収入印紙代はかかりませんが、それでも約20万円かかります。また、登録免許税も株式会社の方が高くなっています。

株式会社と合同会社のメリット・デメリット比較

株式会社と合同会社のメリット・デメリット比較

株式会社と合同会社の二つを比べたときのメリットとデメリットを比較してみましょう。

株式会社のメリット・デメリット

メリット

会社としての信頼性が高い

登記されている会社の約8割が株式会社であり、会社といえば株式会社を思い浮かべる人が多いのではないでしょうか。

また、決算公告が義務とされていることから経営の透明性が保証されています。

これらの理由から、株式会社は「世間から会社として信頼されやすい傾向がある」といえるでしょう。

資本金を集めやすい

株式会社は株式を利用して資金を集めます。新たな株式を発行することで投資家から広く資金を集めることができます。

デメリット

会社設立時・経営継続時の費用がかかる

定款の認証が必須な株式会社は、設立時の初期費用が高くなります。

また、決算公告にかかる費用や、取締役変更による定款変更手続きに関する費用など、経営を続けるなかで、たびたび費用が発生します。

経営者と株主の利益配分が難しい

会社が生み出した利益は、株主へ還元する分と、業務に投資する分とに分けなければいけません。

経営者はなるべく会社の利益となる投資や内部保留にあてたいと考えるでしょうし、株主は少しでも多くの利益を還元して欲しいと考えることでしょう。

株主と経営者それぞれの思惑があることから、その配分を決めるのが難しい場合があるのです。

合同会社のメリット・デメリット

メリット

会社設立時・経営継続時の費用が比較的安い

定款認証が必須ではないため、法的には最低6万円から会社設立が可能です。

また、決算公告も必須ではなく、取締役も必要ないことから、会社を継続する費用も比較的安くすみます。

経営の自由度が高い

出資者がそのまま社員となるため、経営の意思決定をスムーズに行うことができます。

出資者の意思確認や調整が必要な株式会社に比べると、経営の自由度は高いといえるでしょう。

デメリット

株式会社と比べてBtoBの信頼性が弱い

登記されている会社数が全体の約6%と少なく、世間からの認知度は株式会社と比べると低いです。

また、株式で資金調達ができないことや、意思決定を社員のみで行うなどの閉鎖的な面から、社会的な信頼に欠ける組織とみられてしまう可能性があります。

資本金は社員の出資のみ

資本金は社員の出資のみで成り立っています。他の方法で資本金を集めることはできません。

もし、何らかのトラブルが起きて社員が経営から外れることになれば、資本金の額に直接影響してしまいます。

まとめ

認知度や信頼性が高い株式会社と、比較的手軽に設立できる合同会社。

法人化を検討する際には「初期費用や運用コスト」「お客様は個人なのか法人なのか」などの視点で考えてみてはいかがでしょうか?

黒川一美

黒川一美

大学院卒業後、セールスエンジニアとしてIT企業に勤務。出産を期に退職し、お金を稼ぐ側から家計を守る側になり、お金の知識不足を痛感。また、実父の相続の際、資産を守ることの大変さ・大切さを実感し、お金の知識を得るためFP2級を取得。
お金の知識を深め、資産を守るお手伝いが出来るFPを目指している。
執筆:FPサテライト株式会社 所属FP 黒川一美

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