不動産投資をしている皆さま、確定申告で必要経費を正確に計上できていますか?
中には経費になるかどうかわかりにくい項目もありますので「自信がない…」という方もいらっしゃるかも知れません。
しかし正確に経費を計上することは、納税額を抑える手法の一つでもあります。この記事では、不動産投資の経費に計上できるものとできないものについて具体例をあげながら説明していきます。
- 節税効果を得るには、正確に経費を計上することが大切
- 経費にできるのは不動産投資に直接かかわりがある費用
- 自宅兼事務所では家計と区別できれば経費になるものもある
目次
経費を正しく計上することの大切さ

所得税は、収入から経費を差し引いた利益に対してかけられます。
そのため経費が多ければ多いほど納税額は抑えられますが、法律で認められていないものまで計上してしまうと、過少申告加算税や延滞税などのペナルティが課せられるため注意が必要です。
本来支払う必要のない税金を納めないためにも、正確に経費を計上することが大切なのです。
不動産投資で経費にできるもの

不動産投資で経費にできるものは「事業に直接要した費用」です。不動産投資は「事業として行う場合」とそうでない場合があります。事業として行うには投資用の室数がおおむね10室以上であるなどの決まりがあり、所得金額を計算する上での取扱いも異なってきます。
今回は「事業として行う不動産投資」という前提でお話したいと思います。
経費になるもの(1)事業開始や事業継続に必要な費用
まずは事業開始のタイミングや継続していく上で必要となる経費についてみてみましょう。
減価償却費
長期間にわたって使用できる建物や設備といった固定資産の費用は、支払った年に全額経費に計上するのではなく、購入後数年間にわけて計上していきます。
減価償却費は一般的に高額になりますし、実際に現金を支払うわけではないため資金流出のない経費として節税効果が期待できます。
管理会社への支払・広告宣伝費・修繕費など
不動産収入を得るためには、広告や管理業務などが必要になりますね。
集合住宅を一棟購入して管理業務を管理会社に委託している場合であれば、管理会社に支払った委託管理費用は経費になります。
さらに売買および賃貸取引を仲介してくれた不動産仲介会社に支払う仲介手数料や広告料、区分マンションの所有者が管理組合に対して支払う管理費や修繕積立金なども経費として認められています。
一方で管理会社に委託しておらず、自身で入居者募集の宣伝や修繕工事依頼を行っている場合も、これらにかかった費用を経費として計上することができます。
ただし、このとき工事費用は「修繕費として計上するケース」と「減価償却費として計上するケース」があるため注意が必要です。
設備の故障や退去後のメンテナンスなど、原状回復のための工事は修繕費になります。しかし、機能性を高めるために新しい設備と入れ替えを行ったなどの場合は、基本的には減価償却費となります。
具体的にいうと、お風呂の換気扇が壊れて修理をした場合や同型の換気扇と交換した場合は機能が変わらないため修繕費になります。しかし、換気扇が壊れたタイミングで浴室乾燥機に交換した場合は減価償却費となる可能性があるのです。
もし修繕費か減価償却費か分かりにくい場合は、税理士などの専門家に問い合わせてみてはいかがでしょうか。
損害保険料
投資用不動産にかけている火災保険、地震保険などの保険料が経費として認められています。
ただし、経費として計上できるのは1年分の保険料です。複数年分の保険料を一括払いした場合、支払った額と契約年数から1年分の保険料を算出してその年の経費とします。
税理士や司法書士などへの報酬
「確定申告など税金対策のアドバイスを税理士に依頼する」「不動産登記を司法書士に依頼する」など、専門家にサポートを依頼するケースがあると思います。
このように不動産事業に必要なサポートを専門家に依頼した場合に支払った報酬額は経費として認められています。
借入金の利息
投資用不動産を購入するとき、銀行ローンなどを利用した場合には借入金の利息分を経費とすることができます。
なお不動産所得は他の所得と損益通算(赤字と黒字を相殺)することが可能ですが、土地取得に関わる借入金の利息は、不動産所得の金額が赤字となっても損益通算することができません。
税金
支払った税金のうち、不動産事業に必要な税金のみ経費となります。
例えば事業を継続している間は事業税や固定資産税、都市計画税が経費となります。投資物件を取得した年には、それらに加えて不動産取得税や登録免許税、印紙税なども経費の対象です。
このうち固定資産税や都市計画税は家事按分され一部のみ経費となる場合があります。家事按分について詳しくは後述します。
青色事業専従者給与や事業専従者控除
基本的に同一家計の家族や親族に支払った給与は経費として認められていませんが、事業主が青色申告者の場合、年齢や勤務期間などの条件を満たし事前に税務署へ申請することで経費として認められるようになります。
また白色申告者の場合は、従業員の数や親族のうち誰が働いているのか、所得金額はいくらかなどの条件によって導き出された一定の金額を、所得税の計算時に必要経費とみなして控除する特例があります。
この場合事前の申請は不要で、確定申告時に必要事項を記載する形となります。
※参考:国税庁HP>No.2075 青色事業専従者給与と事業専従者控除
経費になるもの(2)家計と区別できれば計上できるもの
不動産投資を個人で行っている場合、自宅で事業を行っているケースがあるかと思います。家計と一緒に支払っている費用のうち、事業で使用している費用と明確に区別できれば経費として計上可能なものがあります。
交通費
事業に必要とされる交通費のみ経費の対象です。例えば、投資物件購入時の内見や商談、所有する不動産の状況確認などの交通費などがあります。
ただし事業に使った交通費だと証明することが必要となりますので、バス・電車などの公共交通機関を利用した場合や、自家用車でガソリン代や駐車場代を支払った場合など領収書を取ってメモを残しておきましょう。
いつ・どこに・何のために行ったのかきちんと記録しておくことが大切ですね。
水道光熱費
自宅兼事務所の場合は、水道光熱費は家計と一緒に支払っていることがほとんどでしょう。業務を行っている時間を記録するなどして、事業に使用した割合を求めることができれば経費とできる場合があります。このように業務に使用した割合のみ経費とすることを「家事按分」と呼びます。
通信費
投資物件検索やお客様とのメールのやり取りなど、業務としてインターネットを使用することもあるでしょう。この場合も水道光熱費と同じように、事業に使用した割合を証明できれば支払った通信費の一部を経費として計上できる場合があります。
自宅の賃貸料や固定資産税
自宅の一室を事業専用に使用しているなど、生活に使用している範囲と事業で使用している範囲を明確に区別できる場合は経費にできる可能性があります。自宅が賃貸の場合は賃貸料を、持ち家の場合は固定資産税や都市計画税を、自宅の床面積に対する事業用の床面積の割合で算出した額が経費となります。
不動産投資で経費にできないもの

不動産投資に直接関係ない費用は経費にすることができません。
具体的には次のようなものがあります。
住民税や所得税など
これらの税金は不動産事業を行っているかどうかにかかわらず一個人として支払わなければならないため、経費とは認められません。
罰金や延滞税など
例えば業務中に交通違反をして課された罰金や、税金の延滞金などは経費として認められません。
同一の家計の家族や親族に支払った給与など
基本的に、同じ家計内の親族や家族に支払った費用は経費と認められません。
経費計上するタイミングの注意点

経費計上のタイミングには注意が必要な場合があります。
その年の必要経費となる金額はその年に「債務が確定した金額」です。債務が確定するとはどういうことかというと、国税庁HPにはこのように記載があります。
- その年の12月31日までに債務が成立していること。
- その年の12月31日までにその債務に基づいて具体的な給付をすべき原因となる事実が発生していること。
- 金額が合理的に算定できること。
これら3つの条件を満たしたときに「債務が確定した」といえるのです。
ではこの内容に基づくと、年末年始をまたいだリフォーム工事の場合、費用の経費計上のタイミングはいつになるのでしょうか。
例えば2021年にリフォーム工事を契約し作業も年内に終了したけれど、支払いは2022年に持ち越したとします。このときの工事費用は2021年分の確定申告時に経費計上します。
一方2021年に契約のみ済ませ、翌年に作業が完了し支払いを済ませたときは、2022年の確定申告時に経費として計上することになります。
このように作業が完了した時期によって経費計上のタイミングが異なってきますので、間違えないように気をつけておきましょう。
まとめ
不動産投資から得られる利益が同じであれば、より多くの経費を申請できた方が納税額は少なくなります。
しかし認められていない費用まで経費としてしまっては、後々ペナルティを課される危険性があります。
経費には線引きがわかりにくい費目もあり、正確に計上するにはある程度手間がかかります。必要に応じて専門家のサポートを得た方がいい場合もあるでしょう。ぜひ自分にあった経費の管理方法をみつけて節税につなげてくださいね。