どこまで経費にできる?個人事業主が覚えておきたい勘定科目12選

どこまで経費にできる?個人事業主が覚えておきたい勘定科目12選

個人事業主にとってもっとも重要な業務といえるお金の管理。

とくに経費の使い方や計上の仕方が合っているかどうか、不安になっていませんか?

この記事では、個人事業主が計上できる経費について解説します。

また、使用頻度の高い勘定科目をまとめましたので「これは経費になるかな?」と迷ったときに参考にしてください。

この記事ではこんなことがわかります

  • 経費にする?しない?判断すべきポイント
  • 個人事業主が使う基本的な12の勘定科目
  • 経費として認められないケースの一例

そもそも経費とは?

そもそも経費とは?

経費とは、一体どのように定義されたものなのでしょうか。

国税庁のホームページには、経費について以下のような記載があります。

  1. 総収入金額に対応する売上原価その他その総収入金額を得るために直接要した費用の額
  2. その年に生じた販売費、一般管理費その他業務上の費用の額

出典:国税庁ホームページ No.2210 やさしい必要経費の知識(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2210.htm

経費とは、正式には「必要経費」と呼ばれるものであり、(1)は仕入れにかかる費用、(2)はその他業務でかかる費用を意味します。

つまり経費とは「事業に必要であった出費」のことなのです。

「これは経費になるかな?」と迷ったときには「業務に必要な出費かどうか」を判断軸にするとよいでしょう。

代表的な経費になるもの12項目

代表的な経費になるもの12項目

経費を計上するときは、支出を勘定科目に当てはめて記録する必要があります。

それでは実際に、経費を計上するときに使用する勘定科目について、個人事業主が確定申告で使用する代表的な項目を確認していきましょう。

なお全てではありませんが、主な勘定科目は国税庁ホームページ「確定申告等作成コーナー」に説明があるので適宜参考にしてください。

日々の業務上で使用するもの

 消耗品費

業務に使用する消耗品のことで、文房具やコピー用紙などがイメージしやすいでしょう。

また「使用可能期間が1年未満か取得価額が10万円未満の什器備品※」も消耗品費に該当します。

※什器(じゅうき)とは、家具や日用品のことです。

つまり、業務に必要な家具なども10万円未満であれば消耗品費に計上できます。

 旅費交通費

業務上の理由で移動や宿泊が必要になった場合、かかった費用を経費に計上できます。

たとえば、バス代・電車代・タクシー代・ホテル代などです。

もしも電車やバスなどの利用時に領収書が発行できないときは、エクセルや出金伝票などを利用して記録を残しておく必要があります。業務に必要であったことを証明するために、いつ・何のために・どこへ・いくらで行ったのかを記録します。

記録がないものは経費として認められませんので注意しましょう。

 減価償却費

減価償却とは、建物や機械など長期に渡って使用する資産の取得費用を計上する方法です。減価償却では資産を取得した年に全額経費とせず、決められた年数に渡って経費を計上します。たとえばパソコンの耐用年数は4年ですので、購入した年の経費になる金額は購入価額の4分の1になります。

ただし取得額によって例外も認められており、10万円以上20万円未満であれば取得年度に全額費用計上もしくは3年間で均等償却も可能です。

さらに青色申告をしていれば、取得額10万円以上30万円未満の一括償却が認められています。その場合、複数の資産取得額を合算することができ、上限は300万円までです。

高価なものを購入するときは、どのように減価償却するべきかを事前に把握しておきましょう。

 租税公課

租税公課とは、支払った税金や事業に関わる共同体の会費などのことです。

事業に関わる事業税・自動車税、不動産事業であれば固定資産税・不動産取得税・登録免許税・印紙税などがあります。また、協同組合、同業者組合、商店会などの会費も計上できます。

とはいえ、すべての税金が経費に算入できるわけではありません。住民税や所得税などは経費には算入できません。

事業の売上アップに必要なもの

 研修費

研修費そのものは、企業が従業員に対して教育を受けさせるときに使われる勘定科目ですが、個人事業主自身がスキルを獲得するときにも使用することができます。

たとえば、資格取得やセミナー参加、講習会参加などがあります。

経費に算入するか迷ったときは、それが「事業の拡大や継続のために必要か」を考えてみるとよいでしょう。ただし、士業など独立可能な資格については「個人のメリットが大きく、プライベートな支出である」と判断され、経費に認められないケースもあります。判断に迷うときは専門家に相談してみてはいかがでしょう。

 図書新聞費

図書新聞費は、書籍や新聞の購入費用や定期購読の費用を指します。

事業のために役立つ情報を得る、という意味では研修費と似ていますが、書籍や新聞の購入時はこちらを使用するとよいでしょう。

新聞や雑誌をデジタル版で定期購読している場合も、購読料金は図書新聞費に計上しておくとよいでしょう。

 広告宣伝費

広告宣伝費は本来、新聞や雑誌、折込チラシなどの広告費用です。宣伝目的で名前入りのノベルティ(記念品)を作った費用も広告宣伝費となります。

その他、事業を宣伝するために支出したウェブ・SNS上の広告費なども、広告宣伝費と考えることができます。

 接待交際費

接待交際費には、取引先への贈答品や、打ち合わせの際の飲食費などがあります。

国税庁ホームページには「相手方や支出の理由などからみて、事業を営む上で通常必要と認められる金額」までが必要経費となる、と記載があります。

常識的に考えられる範囲のみ経費として認められる、と心掛けましょう。

家事按分する必要があるもの

個人事業では、家賃や水道光熱費など家計用と事業用の費用をまとめて支払う場合があります。このうち、事業用に使用したと証明できる部分については経費となります。

部屋の広さや業務時間などを考慮して、費用全体から業務に使用している割合を経費とします。このように事業に必要な費用を分けることを家事按分(あんぶん)といいます。

 地代家賃

開業時に事務所として登録した自宅の家賃の一部を、地代家賃として計上することができます。たとえば、家賃10万円で40平米の部屋のうち、業務で10平米を使用している場合、経費に算入できる家賃は全体の1/4となり10万円×1/4=2万5,000円です。

経費になるのは、実際に業務をするときに使用している部屋の広さの分のみです。

 水道光熱費

水道光熱費は、水道代・電気代・ガス代・灯油の購入費などとされ、こちらも家事按分が必要となります。

たとえば電気代は、使用しているコンセントの口数や、1日24時間のうち、業務のために電気を使用した時間などから計算する方法があります。

 通信費

通信費は、本来であれば電話料・切手代・電報代とされています。最近ではスマートフォンの使用にかかる通信費や通話料を指すケースが多いでしょう。

全体の料金から、1日24時間のうち業務に使用した時間分を計上します。

 車両費

車両費は業務用の車にかかった費用を計上するものです。修理費や保険料なども計上できます。

自家用車と併用している場合は、ガソリン代を家事按分しましょう。走行距離や利用時間から業務に使用した分を割り出します。

なお、経費に計上するものがガソリン代だけであれば、旅費交通費や消耗品費に含めることもできます。業務で車を使う頻度や目的によって決められてはいかがでしょう。

経費にならないもの

経費にならないもの

業務に関係があると証明できないもの

プライベートな行為での支出は、経費には算入できません。

経費は「事業のために必要な出費」ですから、個人的な外食や、友人との食事を接待交際費にしてはいけません。

業務上の理由で食事をした場合は、領収書の裏に「誰となんの目的で食事をしたか」を記入しておくとよいでしょう。

また、領収書や出金伝票など、証明できるものがないと経費として認められません。しっかり保管しておきましょう。

社会保険料

個人事業主が支払う国民年金保険料や、前年の所得に応じて支払う社会保険料。

これらは経費として計上することはできません。

ですが、確定申告時に所得から引くことができる「社会保険料控除」の対象となりますので、納付証明書などは保管しておきましょう。

配偶者に支払うもの

「業務を妻に手伝ってもらったので外注費を渡した」など、生計を一にする者への支払いは経費として認められません。

家庭内のお金は、基本的には同じお財布から出るものと考えられるためです。

もしも妻など、家族に支払った労働対価を経費として扱いたい場合、青色申告者であればその家族を「青色専従者」として申請する方法があります。

その場合、妻がもっぱら事業に専念するものでなければなりません。

こんなときどうする?

こんなときどうする?

個人事業主として日々生活していると、支払いが生じたときに「これは経費にしていいのかな?」と迷うことがありますよね。

冒頭で経費とは「事業のために必要な出費」とお伝えしました。しかし、事業に関わるように思えても、経費に算入できないケースもあります。

今回は3つの例を見てみましょう。

カフェで仕事をしたとき

カフェの利用が事業に必要なものであれば、飲食代を経費に算入することができます。

たとえば、取引先との打ち合わせがあった、飲食店のレビュー記事を作成するための取材で店を利用した、などが考えられます。

一方、単なる作業のためにカフェを利用したときはどうでしょうか。

この場合、開業時に自宅を事務所として登録し、家賃を経費で落としているのであれば注意が必要です。

「本来は自宅で作業する」と税務署に申告しているのですから、自宅ではなくカフェで作業をした正当な理由がなければ、飲食代を経費に算入することはできません。

健康診断に行ったとき

「事業を続けていくためにも健康管理が大切だ」と考えて健康診断を受けることがあるかもしれません。

しかし個人事業主は、健康診断にかかった費用はプライベートなものになり経費に算入することができません。

事業用車両が駐車違反で罰金を受けたとき

罰金は経費に算入することができません。

たとえば個人で配達業を営んでおり、事業用の車で配達中に駐車禁止エリアに駐車するなどして罰金が発生してしまった場合。

このとき、払わなければならない理由が業務に関連しているとしても、罰金は経費として認められません。

業務上においても交通違反などをしてしまわないよう注意しましょう。

まとめ

経費に計上できるかどうか迷ったとき、判断軸となるのは「それが事業に必要な出費であったかどうか」です。

また、日常生活と共用となる家賃や通信費などは、家事按分をすることで業務に関わる割合のみを経費に計上することができます。

いずれも、プライベートと業務上の支出をしっかり分けて考えることが大切です。

確定申告時に不安になってしまわないよう、日ごろから正しい経費の使い方を意識しましょう。

荒木莉乃

荒木莉乃

フリーランスとして活動中、お金の知識の乏しさを痛感しFP3級を取得。
結婚後、夫婦共々保険や不動産のガツガツした人に弱く、上手く話に乗せられやすい性格であることを実感。
家計を守るためにFP2級、AFPを取得。
現在は複業在宅ワーカーとして、FPサテライト株式会社で活動している。

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