近年、社員の副業を解禁する会社が増えてきました。
企業にとってみれば、従業員が副業などによって別の収入源を持つようになれば、自社での人件費コストをカットしやすくなります。
労働者側としても、収入源を複数確保しておくことで、将来の雇用不安や老後の生活に対して備えることが可能になります。
企業に勤める会社員が副業をするというスタイルは、今後当たり前の形になるかもしれませんね。
副業を考えるときに避けて通れないのが「税金」についてではないでしょうか。
普段、会社員の方は会社で年末調整を行っているため、ご自分の支払っている税金について深く考える機会は多くないかもしれません。
しかし、副業を始めるならば税金について理解し、さらには節税の方法についても知っておきましょう。
本記事では、これから副業をしてみようかとお考えの会社員の方向けに「税金」についての基礎知識と、また個人事業主になった場合の税制優遇について説明します。
- 「収入」と「所得」の違い
- 副業の年間所得は20万円が所得税のボーダーライン
- 個人事業主の税制優遇
目次
そもそも副業とは?

副業とは、実は明確な定義があるわけではありませんが、一般的には収入を得るために行う本業以外の仕事を指します。
兼業、サイドビジネス、ダブルワークなどとも呼ばれます。
本業の会社の就業時間外に、内職やパート、アルバイトをすることは以前からあるスタイルですが、現在はネットやスマホアプリを利用して収入を得ることもできるようになっています。これらも収入があれば副業に含まれます。
今は時間や場所にとらわれず収入を得られる環境にあるため、副業のハードルは下がっています。反面、正しい税金の知識を持っていないがために、後々税金の面で面倒なことが起こる危険性もはらんでいます。
税金の知識がなくうっかり申告し忘れていた、といった場合でも言い訳は通用しません。正しく納税を行わないと脱税とみなされてしまいますので注意してください。
「収入」と「所得」の違い

まず「収入」と「所得」の違いについて、改めて確認してみましょう。
- 「収入」とは、会社からもらった給与のこと。パートやアルバイトで得た給与も含む
- 「所得」とは、「収入」から「必要経費」を差し引いて残った額のこと
たとえば、スーパー、コンビニ、飲食店などで働いて得たお金は「収入」=「給与収入」です。「給与収入」の場合は、「必要経費」に該当するものとして「給与所得控除」というものがあるため、「収入」から「必要経費」を控除することはできません。
なお、「必要経費」とは、読んで字のごとく、副業を行う上で必要な経費のことを指します。
交通費、ガソリン代、旅費、広告費など、職種により項目は多岐にわたりますが、経費として認められたものは、「収入」からの控除が可能となります。
家賃、水道光熱費などの生活費に関しても、副業として使用していることが認められれば、居住区分と業務区分とで費用を按分することにより経費として計上できます。
また、当然のことながら経費として計上するためには、レシートや領収書が必要となりますので、普段から大切に保管しておきましょう。
所得の種類
税法上の所得は以下の10種類に分類されます。
税法上の所得の種類
1 | 利子所得 | 6 | 退職所得 |
2 | 配当所得 | 7 | 山林所得 |
3 | 不動産所得 | 8 | 譲渡所得 |
4 | 事業所得 | 9 | 一時所得 |
5 | 給与所得 | 10 | 雑所得 |
本業の会社勤めやパート、アルバイトから得る収入は給与所得となります。
本業とは別に、個人事業主として事業を営む、自分自身で会社を経営するなどして得た収入は、事業所得となります。
1~9のどれにも当てはまらない所得は雑所得となります。たとえば、執筆、アフィリエイトサイト、フリマアプリ、動画サイトなどからの収入が該当します。
会社員の副業での収入は、その就労形態によって異なるものの大半は、給与所得、事業所得、雑所得のいずれかの所得区分に分類されます。
所得税の課税ボーダーラインは年間所得20万円

では、副業でいくら稼ぐと確定申告が必要となり、また、所得税がかかるのでしょうか?
本業の会社で年末調整を行っている場合には、副業からの収入が以下のいずれかに該当すると確定申告が必要となります。
- 給与所得者の場合、年間収入が20万円を超えたとき
- 雑所得者の場合、年間所得(収入-必要経費)が20万円を超えたとき
逆に言うと、副業の年間収入または所得が20万円以下であれば確定申告は不要となり、副業による収入に対しては所得税はかからない、ということです。
ただし、医療費控除、住宅ローン減税、寄付金控除(ふるさと納税)などで確定申告を必要とする方は、副業の収入が所得税の確定申告不要である20万円以下でも、副業の収入、所得額を申告する必要があります。
住民税の申告は必須
副業による収入が、年間20万円以下であれば確定申告は不要となりますが、では住民税はどうでしょうか?
そもそも、住民税には申告不要という制度がありません。したがって、所得税の確定申告が不要な場合でも、住民税に関しては必ず申告が必要となります。申告手続きは居住地の市区町村で行います。
なお、所得税の確定申告を行った場合には、税務署から市区町村へ確定申告の情報が連携されますので、別途住民税を申告する必要はありません。
個人事業主になることで節税できる

副業を行うにあたり、個人事業主になることでさまざまな優遇措置が受けられるようになります。
個人事業主になるには事業が継続的、反復的であることが条件ですので、対象とならない種類の副業もありますが、検討してみる価値はあるでしょう。
個人事業主になるには、納税地の管轄税務署に「開業届」を出します。「開業届」の手数料は無料ですので、開業資金は必要ありません。
個人事業主になることで、個人事業主を対象としたる税制優遇を受けることが可能になります。
また、収入の区分が雑所得から事業所得になり、副業で損失が出た場合も給与所得と損益通算することができるようになります。
個人事業主の税制優遇
個人事業主が利用できる税制優遇のうち、代表的なものを3つあげます。
1.青色申告を利用できる
必要経費を引いた年間所得が20万円を超えると確定申告が必要になりますが、その確定申告には2種類あります。
- 「白色申告書」・・・誰でも利用可能だが、特別控除なし
- 「青色申告書」・・・事前に税務署に開業届および青色申告承認申請書を提出することで利用可能。特別控除あり
個人事業主になったなら、ぜひ利用したいのが青色申告です。
青色申告は、事業所得または事業的規模の不動産所得のある方が、複式簿記による帳簿付けなどの一定の条件をクリアした場合に認められる申告形式ですが、白色申告書との大きな違いは、基礎控除額48万円に加え、特別控除として55万円が控除される点です。
税制改正により、2020年分から青色申告特別控除額と基礎控除額が変更になりましたが、控除可能となる総額は昨年までと同じ103万円です。
さらに、下記のどちらかの要件を満たせば、青色申告特別控除額が10万円上乗せされ最大65万円の控除が受けられることになります。その場合には合計控除額は最大で113万円となります。
10万円上乗せの要件
- e-Taxで確定申告書、青色申告決算書を提出
- 電子帳簿で仕訳帳、総勘定元帳を保存
2.損益通算できる
損益通算とは、収入源が2つ以上ある場合、その収入源の間で損失と利益を相殺する仕組みです。
会社員の方が個人事業主として開業している場合、副業の所得は事業所得として、本業の給与所得と合算して確定申告できます。
仮に、副業で損益を出てしまった場合も本業の収入と相殺することができますので、結果として課税所得が減ることになり所得税や住民税が軽減されます。
なお、給与所得と損益通算できるのは、不動産所得、山林所得、譲渡所得、そして事業所得の4つです。(不動産所得、山林所得、譲渡所得、事業所得の間で損益通算を行った後、それでも損失が残っている場合に、給与所得との損益通算がおこなわれます。)
つまり、雑所得の扱いでは損益通算できなかった損失を、事業所得の扱いにすることで相殺することができるようになるため、大きな節税になりますね。
3.損失や赤字の繰り越しが可能
損益通算をしてもなお損失が残るときは、青色申告を利用している場合はその損失残額を翌年以降3年間にわたり各年分の所得金額から控除できますので、所得税や住民税の軽減につながります。
まとめ
会社員として働いているだけであれば、あまり馴染みのない税金。
ですが、副業を始め「個人事業主」となった場合は、事業利益を最大限残し将来の事業資金とするためにも、必須の知識となります。
正しい税金の知識を身につけることで、知識不足による意図しない脱税も防げるだけでなく、よりご自身の事業に合った節税対策も打てます。
本記事をお読みいただき、ご自身にあった節税方法を見つけていただけると嬉しく思います。
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