アパート経営で節税できる?具体的な注意点と節税方法を紹介!

不動産投資の中で最もイメージしやすいのが「アパート経営」ではないでしょうか?アパート経営の一番の目的は家賃収入だと思いますが、収入が発生するということは税金を納める必要があります。

この記事ではアパート経営ではどのような税金が発生するのか、それに対してどのような節税方法があるのかを解説したいと思います。

この記事ではこんなことがわかります。

  • 節税の対象となる税金がわかる
  • 具体的にどうすれば節税できるのか仕組みがわかる
  • 節税の注意点がわかる

節税対象となる税金は?

節税対象となる税金は?

まず初めにアパート経営ではどのような税金が発生するのか見ていきましょう。

アパート経営で発生する税金

  1. 所得税
  2. 住民税
  3. 事業税
  4. 固定資産税
  5. 都市計画税
  6. 消費税
  7. 不動産取得税
  8. 登録免許税
  9. 印紙税

上記全てが必ずしも課税されるとは限りません。それぞれ簡単に説明します。

(1)所得税(2)住民税

アパート経営で所得が発生した時に支払う税金です。所得とは収入から経費を差し引いたものになるので、可能な限り経費を計上することで課税額を減らすことができます。

(3)事業税

貸与している独立した部屋がおおむね10室以上であれば、事業的規模として扱われるため事業税が課税されます。個人事業税は年間290万円の事業主控除があるため、所得金額が290万円以下の場合は課税されません。

(4)固定資産税(5)都市計画税

毎年1月1日時点で不動産を所有している場合に課税されます。

まず固定資産税ですが、居住用の賃貸アパートには「住宅用地の特例」が適用され、小規模住宅用地の200㎡までの部分は課税標準額が6分の1になります。

また、賃貸アパートを新築した場合は、3年間にわたって1戸当たり120㎡までの住宅部分床面積について固定資産税が2分の1に軽減されます。(3階建て以上の耐火または準耐火建築物である場合は5年間)

都市計画税にも「住宅用地の特例」による軽減措置があり、小規模住宅用地では3分の1になります。

(6)消費税

普段スーパーやコンビニで買い物をした時に課税される消費税と同じです。ただし前々年および前年の1月1日〜6月30日の課税売上高が1,000万円以下の場合は、免税事業者となるため消費税の納税義務はありません。

(7)不動産取得税(8)登録免許税(9)印紙税

不動産取得税はアパートを建てた時に課税されます。軽減制度が適用され、新築アパートの床面積要件を満たす場合、住宅の価格から1,200万円が控除されます。

登録免許税は取得したアパートの土地や建物を登記するために課税される税金です。納付方法は原則現金で、領収書を登記申請書に貼り付けて法務局の登記所に提出します。

印紙税は工事請負契約書やローン契約書などの特定の文書に課税される税金です。課税文書に収入印紙を貼り、消印すれば納税したことになります。

具体的な節税対策

ここまでアパート経営に関連する税金について概説しました。これらの中で最も大きな節税対策が可能なのは(1)所得税と(2)住民税です。

所得税は「総収入額ー必要経費ー各種所得控除=課税所得金額」によって決定されます。

住民税は「均等割+所得割」の合計で計算されます。均等割の税額は同じ自治体内であれば所得に関係なく一律の金額で、所得割は基本的に一律10%の税率となります。

所得割の税額は所得税の計算方法とほぼ同じで、各種所得の合計から所得控除額を差し引いて求めます。

つまり、経費と控除の額が大きくなれば節税につながるのです。その方法をいくつか解説していきます。

経費の計上

アパート経営の収入は「不動産所得」として扱われますが、これは家賃収入などから必要経費を差し引いた所得です。経費には先に説明した固定資産税や都市計画税が該当します。

また税金以外では管理費や修繕費などが経費として認められます。これらの経費をいかに多く計上するかが節税のポイントになってきます。

中でもアパート経営で最も大きな経費となりうるのは「減価償却費」です。減価償却とは建物や機械などの固定資産を取得した際に、取得にかかった費用全額をその年の費用とせず、耐用年数に応じて配分して数年に渡って費用として計上する仕組みです。

この減価償却による費用を経費として計上することで、所得を圧縮して節税に繋げることができます。

青色申告

事前に「青色申告承認申請書」を税務署に提出して、日々の取引を複式簿記で記帳し、電子申告で確定申告を行うと65万円の「青色申告特別控除」が受けられます。

(参考)No.2072 青色申告特別控除(国税庁

損益通算

不動産所得に赤字が発生した場合、他の所得と通算して総所得金額から控除することができる制度です。確定申告で損益通算を行って総所得を抑えることで、所得税を節税することができます。

損益通算に対する疑問

損益通算に対する疑問

3つの節税対策について解説してきましたが、節税目的で行う損益通算について少し考えてみましょう。

損益通算で節税を行うためには収益を上げながら適切に経費を計上し、青色申告特別控除の65万円と合算して赤字になるように調整する必要があります。

しかし、アパート経営には突発的な修繕や空室リスクなど見通しが立たない点も多々あります。

このような予測できないリスクを考慮しつつ、他所得との兼ね合いをみながら不動産所得を赤字になるように調整するというのは、非常に難しいのではないでしょうか。

アパート経営の目的は損益通算なのか

さらにここで考えたいことは、アパート経営はなんのために行うのかということです。

万が一赤字になってしまった場合に、結果として損益通算によって節税につがなることはあります。

反対に節税のために最初から赤字を目的としてアパート経営を行うのは、リスクを抱える可能性があるのではないでしょうか。そう考えると、やはりトータルで収益を上げることが健全であると考えられます。

継続的に赤字が続くアパート経営は、リスクの解消を目指すか、売却の検討も視野に入れる必要があるでしょう。

初年度であれば節税効果は期待できる

ただしアパート経営において、損益通算が望まれるケースもあります。

初年度は不動産取得税や登録免許税を経費として計上します。また、新築のアパートであれば全室が空室からのスタートなので、入居者を募集するための広告宣伝費がかかることは十分考えられます。

上記の理由から、初年度であれば経営状態が健全であっても、不動産所得が赤字となるケースは考えられます。その場合は損益通算を利用して節税を行うのがよいでしょう。

他にもアパート経営を終了する場合には解体費用が必要になるので、最終年度には赤字が発生する可能性があります。また外壁塗装の大規模修繕を行った年度は、計上される経費が非常に大きくなるため、不動産所得がマイナスになることも多いでしょう。

健全なアパート経営でもこのようにイレギュラーな赤字が発生した場合は、損益通算による節税効果が期待できそうです。

資産として考えた時の節税方法

資産として考えた時の節税方法

ここまでアパートを収入源として見た場合に、所得を減らすという観点で節税方法を検討してきました。しかし、ここで別の視点から考えてみたいと思います。

アパートは資産としても考えられます。ということは、いずれ手放すことを考える必要があるため、将来的に相続を検討するのも選択肢の1つです。

相続税の節税には有効

相続税の基本的な評価額は「時価」、つまりその時の取引金額が評価額となります。そのため、現金で1億円を相続すると1億円に対して相続税が課税されます。

一方で時価1億円の不動産を相続した場合、小規模宅地の特例が適用されるため、現金で相続したときよりも相続税評価額は低くなります。

アパートを相続した場合

アパートの相続税は土地と建物の部分に分けて考えます。

まず、土地はアパートを建てることで「貸家建付地」となり、更地の場合と比較して評価額が軽減されます。

アパートなどの賃貸建物は貸家といい、次のように評価されます。

貸家の評価額=固定資産税評価額−(固定資産税評価額×借家権割合×賃貸割合)

借家権割合は全国一律30%であるため、固定資産税評価額が1億円、賃貸割合が90%とすると、その評価額は7,300万円となります。

相続税対策としてアパート経営を検討するのであれば、収入を確保しながらも有効な手段となりうるのではないでしょうか。ただし相続人が複数存在する場合は、分割方法を協議しておく必要があるでしょう。

まとめ

アパート経営による節税について解説いたしました。

メリットの一つに損益通算を利用して節税に繋げることができるという点がありました。しかし所得税の節税目的でアパート経営を行うのは、収支を調整する難易度が高く、不健全な経営に陥るリスクがあります。

損益通算による所得税の節税は狙って行うよりも、不動産所得が赤字になってしまった際の対処と考えた方がよいでしょう。

しかし、相続税の節税方法としては有効な手段となる可能性があります。アパート経営による収益も確保しながら、節税による効果も同時に享受できれば一石二鳥です。

この記事がアパート経営による節税に興味がある方にとって、検討材料や手がかりになれば幸いです。

阿部倉弘子

阿部倉弘子

大学卒業後、フリーター、OAインストラクターを経てIT企業へ就職。
IT企業就職と同時に始めた一人暮らしで家計管理の難しさを知り、お金について興味を持つ。
保険相談を通じてファイナンシャルプランナーという職業の奥深さを知り、FP2級を取得。
IT企業勤務の傍ら、どんな状況でもお金の不安を感じない人生設計をするガイド役FPとして活動している。

カテゴリー:
関連記事