会社経営をしている方や、個人で資産を多く保有している方は個人資産が増えてくると税金の負担も増え、複雑な気持ちになりますよね。可能であれば、支払う税金は少なくして手元にお金を残したいと考えることもあるでしょう。その場合は、資産管理会社を設立し活用するという方法があります。
今回は、資産管理会社を活用して納税額を抑える方法と、設立の流れについて解説します。
- 税金面での資産管理会社の活用法
- 資産管理会社のメリット・デメリット
- 資産管理会社の設立手続きと流れ
目次
資産管理会社とは

資産管理会社とは、オーナー個人の資産を管理する目的で設立する会社のことを指します。その会社自体で事業活動は行わず、主に不動産投資や相続対策に活用されます。
一般的な会社のように、株主や従業員などがいないため、プライベートな法人という位置づけです。
会社を設立する手間やコストはかかりますが、個人で現金や預貯金、債券、株式、不動産などの資産を管理することに比べてメリットがあります。
どんな人が活用できるか
主に以下の3つに当てはまる人が、資産管理会社を活用し、メリットを享受できるのではないでしょうか。
- 会社経営のオーナー社長
- 相続税の支払いが予定される資産家
- 本業または副業で不動産投資を行っている人
共通していることは、課税される所得が多い資産家であるという点です。
節税は可能か
個人資産の管理は会社を設立しなくても可能です。しかし、会社が個人資産の管理をする主なメリットに節税があります。うまく資産管理会社を活用すれば、所得税や相続税の節税効果や、所得の分散効果などが見込めます。
税金面での資産管理会社活用法

資産管理会社を活用すると、なぜ節税できるのか。それは、個人と法人に係る税率の違いによります。税率の差を利用すると、どのように節税できるのかについて詳しく解説します。
所得税率と法人税率の差
個人の所得にかかる所得税率は「累進課税」といって、所得が多くなればなるほど高くなります。課税される所得金額が4,000万円以上で最大税率45%になります。また、住民税の10%も合わせると、個人の所得に対する税率は最大で55%にもなるのです。
本業の所得だけでなく、副業や不動産投資で収入がある場合も所得が合算され課税されることになります。
資本金1億円以下の法人の場合、法人の所得にかかる法人税は2段階になっています。年800万円以下の部分に対する税率は15%、年800万円超の部分に対しては23.20%の2段階です。
※事業開始年度が平成31年4月1日以降の、適用除外事業者でない場合
個人と法人を比べると、法人の税率の方が個人に比べ低く設定されているので、法人で資産管理をした場合、その税率の差分が節税になります。
もし個人で課税所得が4,000万円以上なら、半分以上は税金に消えてしまうことになります。それが資産管理会社を設立して法人税として納税する場合は、2割程度で済むのです。大きな違いですね。
個人事業主と比べて、法人はどのような点で節税になるか
個人と法人の所得に対する税率の違いが理解いただけたと思います。では、個人事業主の場合はどうでしょうか。個人事業主の場合は、従業員を雇って事業を行っていたとしても、法人登記をしていなければ税率は個人と同じです。
逆に、資産管理会社は他の従業員を雇わず自分1人だけであっても、法人登記されていれば法人税の適用になります。
そのため、個人に比べ税率が低い法人の方が、節税になる確率が高くなるのです。また、個人事業を法人化すると必要経費の品目や枠が増える利点もあります。
たとえば、役員報酬や退職金の支給、社宅の利用や日当の支給も法人の場合は可能になります。また、個人事業主では加入できない厚生年金保険に加入できるようになります。その結果、将来の受取り年金額を増やすことも可能です。
相続税の節税
多くの資産をもっている方が高齢の場合、多額の相続税が発生する可能性が高いので事前に準備をしておきたいですよね。
個人で所有している財産は、所有者が死亡すると相続税が発生します。個人では原則10ヶ月以内に清算しなければならず、現金化に苦労することも多々あります。
しかし法人が所有する財産の場合、清算の期限はありません。また、税率も低いかたちで落ち着いて手続きができます。
相続税を減らすにはいくつか方法がありますが、今ある資産を事前に親族へ移転するのも有効な手段です。
資産管理会社を設立し、親族を役員にして報酬を支払うことによって自分の資産を移転することができますし、納税資金にもなります。
資産管理会社を通さずに一般的な贈与をする場合は、基礎控除後の課税価格が3,000万円超の場合で最高税率55%と、とても高くなっています。
資産管理会社からの報酬として親族にお金を支払うと、現金が移転できるうえ経費としても計上できます。つまり、所得の分散に加えて会社の法人税も抑えられるのです。
ただし、役員は勤務実態を伴うことが必要です。未成年や会社勤めをしている親族を役員にすると、勤務実態がなく経費として認められない場合もあるので注意しましょう。
資産管理会社のメリット・デメリット

資産管理会社の設立はメリットばかりではありません。デメリットも含めそれぞれ確認していきましょう。
メリット
資産管理会社を設立する主なメリットは、以下の4つになります。
- 所得に対して個人にかかる所得税率より低い法人税率が適用される
- 相続税の節税対策ができる
- 使用できる経費の品目や枠が増える
- 所得の分散効果がある
なかでも、法人税率が適用できて節税になる点が大きなポイントです。
デメリット
資産管理会社を設立する主なデメリットは、以下の3つになります。
- 設立の手続きが煩雑
- 会社の設立費用と運営コストがかかる
- 資産管理会社が保有する資産をオーナーが自由に使うことができない
なかでも、資産管理会社が管理している資産をオーナーが使用したい場合は面倒です。該当の資産は法律上、会社の持ち物なので個人が自由には使えません。一度、資産管理会社からオーナー個人に資産を移す手続きが必要です。その場合、法人税率は適用されず、個人の総合課税として扱われてしまうので注意が必要です。
資産管理会社の設立の手続きと流れ

実際に資産管理会社を設立する場合の手続きと流れについて確認していきましょう。
設立する際に決める事と必要なもの
資産管理会社を設立する場合は、以下の事項を決める必要があります。
- 社名
- 本店所在地
- 事業目的
- 出資者
- 資本金の額
- 決算月
- 法人形態(株式会社・合同会社等)
必要なものは以下になります。
- 法人用印鑑セット(代表者印・社印・銀行印)
- 定款
- 登記書類
- 資本金
- 事業開始の届出
設立の費用とランニングコスト
設立費用は、自分で手続きする場合と司法書士に依頼する場合で異なります。
自分ですべて手続きする場合、株式会社の設立費用を例にとると、定款の認証にかかる印紙代や公証人手数料、登録免許税やその他手数料で、少なくとも約25万円前後の費用がかかります。
合同会社の場合は、株式会社に比べると費用が安く約10万円程度になります。
司法書士に手続きをすべて依頼する場合は、依頼する人により費用が変わります。しかし手続きが煩雑なので、専門家に依頼するとスムーズに設立が可能です。
また、資産管理会社のランニングコストのうち、決算が黒字でも赤字でも毎年必ずかかるのが「法人住民税の均等割り」の7万円です。
それ以外にも、法人の経理処理や決算は複雑なので、税理士などの専門家への依頼が必要になる場合が多いです。その報酬額もランニングコストになります。
設立手続きと流れ
会社設立の流れは、必要事項を決めた後に定款を作成し、資本金の振込を行います。そのうえで法人設立に必要な書類を揃えて、法務局に設立登記申請を行います。また、税務署にも事業開始の届出などの書類を提出します。
まとめ
資産管理会社は、うまく活用できれば節税効果がありますが、メリット・デメリットともにあります。設立や運営のコストに自分の資産が見合うか、何を主目的に会社を設立するかよく考えられるといいですね。判断が難しい場合は専門家にアドバイスを求めながら、進めていきましょう。