中小企業の節税対策。最初にすべきポイントは?『事例有り』

中小企業の節税対策。最初にすべきポイントは?『事例有り』

事業に必要な資金を効率よく確保するため、企業にとって節税対策は重要な手段の一つです。しかし、多くの企業が苦戦するポイントでもあります。

節税といっても、違法な行為になるような過激な節税はもちろん行うべきではありませんし、訴訟につながるようなリスクをわざわざ取る必要もありません。

節税のそもそもの目的は、「法人としての社会責任を全うしつつも、法的な許容範囲内、且つ正当な方法で支払う税金額を減少させ、営利企業としての利益を最大限にすること」です。

企業は本来、利益の要である事業や経営に専念すべきであり、節税はあくまで計算上の利益を最大限にするため。つまり、節税は最適な範囲、必要最低限のコストで行われるべきものです。

今回は、さまざまある節税方法の中から一部を取り上げながら、企業としてどのような考え方で節税を行うべきかについて説明していきます。

この記事では、次のことがわかります。

  • 節税はどこから始める?
  • 中小企業が節税で利用できる主な優遇税制の概要
  • 事例を元にした節税の実践

初めに見るべき3つのポイント

初めに見るべき3つのポイント

冒頭で、企業は本来事業に専念すべきで節税対策は二の次である、と書きましたが、実際のところは節税の方法もしっかり学んでおく必要があります。

なぜかというと、その本業で稼いだ利益を少しでも多く残せるようにすることは、税金の払い過ぎを防ぎ、企業のその後の投資やキャッシュフローに良い影響を与えるからです。

組織が営利企業である以上、利益を追求することは必要不可欠ですし、むしろその利益を最大限にできるような方法があれば企業として実行すべきです。

適切な範囲であれば、節税対策も企業戦略の一つとして組み込まれて然るべきなのです。

では、多くの経営者が節税対策について考える時、まずどのようなポイントを押さえるべきでしょうか?

最低限抑えておくべき3つのポイントをご紹介します。

現在の申告制度と実際に負担している税率

事業者が選択できる確定申告の制度として、「白色申告制度」「青色申告制度」がありますが、節税という観点でみれば明らかに青色申告制度の方が有利です。

家族への支払いを「専従者給与」として経費扱いにできたり、欠損金の繰越控除ができたりと、多くの税制面での優遇があるからです。

現在青色申告制度を利用していない方は、申告制度の切り替えを検討しても良いでしょう。

確定申告の制度を検討すると同時に、ご自身の事業利益に対する法人税率についても把握しておきましょう。

法人税等には、法人税、地方法人税、法人住民税、事業税、地方法人特別税があります。

利益(収益から費用を引いた金額)、課税所得金額(税額計算上、調整した益金と損金の差額)、実際に負担している税金および負担税率を把握しておくことは、節税対策を行う上で必要不可欠であり、現状の税負担の割合を知る目安にもなります。

財務省によると、2020年11月現在の法人税の税率は「普通法人又は人格のない社団法人等については23.2%、資本金1億円以下の普通法人又は人格のない社団法人等の所得の金額のうち年800万円以下の金額については15%」となっており、名目上は中小企業の方が税負担が軽いことになっています。

優遇措置を受ける「中小企業」に該当する条件を満たしている事業者で、かつ、課税所得を800万円前後に調整することができれば、税負担を減らせる可能性がありそうです。

現在利用している優遇税制の有無

企業、特に中小企業に対しさまざまな優遇税制があります。

法人税法上、課税所得に乗じる税率は事業者の区分ごとに決まっており、負担税額の算出までの流れも事業者ごとにあまり変わりません。しかし各種の優遇税制を利用することで、支払う税金の額を抑えることができる余地があります。

このように、既に法的に定められていて改善の余地がない部分と、優遇税制の適用などによる改善できる余地がある部分をしっかり見極めることが重要です。

節税対策として、優遇税制を利用するための条件を正確に把握し、利用できる優遇税制は積極的に利用していきましょう。

今後予定している大きなイベントの有無(M&Aや事業継承など)

中小企業の経営者の中には、将来的にM&Aや事業継承などの重大な意思決定を行う方もいらっしゃると思います。

まだ現状として何も考えていない方も、将来実行に移す際発生する可能性のある多額の税金に注意する必要があります。

M&Aや事業継承を具体的に考えていない段階でも、具体的な節税対策を前もって準備しておくことで、想定外の税金を支払うことが避けられます。

中小企業が節税で利用できる各種税制

中小企業が節税で利用できる各種税制

上記の3つのポイントによって、自社の節税対策が現状どれほどできているか、ある程度はチェックできたと思います。

では、実際に中小企業が節税対策を行う時にどのような制度を利用できるか、主な優遇税制についてみていきましょう。

なお、これらの税制の適用条件には「対象事業者が青色申告者であること」が含まれていますので、ご注意ください。

1. 欠損金の繰越控除、繰戻還付

欠損金の繰越控除とは、該当の事業年度に発生した欠損金をその後10年間(平成29年度までに開始した事業年度で発生した欠損金は9年間)に渡って、繰り越すことができる制度です。

益金が出た事業年度にも、欠損金の繰越制度を利用することで税負担を軽減することができます。

欠損金の繰戻還付とは、欠損金が発生した事業年度の前年度に支払った法人税額から、欠損金額の前期所得金額に占める割合の分だけ還付を受けることができる制度です。

ただし、還付を受け取った分の欠損金については、上記の繰越控除の制度は利用することができません。

2. 中小企業投資促進税制

一定の機械装置等の対象設備を取得や製作等した場合に、取得価額の30%の特別償却、または7%の税額控除が選択適用(税額控除は資本金3,000万円以下の法人、個人事業主のみ)できる制度です。

これにより、通常の減価償却費を計上するよりも多くの費用を計上することができ、結果支払う法人税額も少なくなります。

3. 中小企業向け所得拡大促進税制

従業員への給与等の支給を前事業年度比1.5%以上増加した場合に、その増加額の15%分を法人税額や所得税から控除できる制度です。

また、前事業年度比2.5%以上の高い賃上げに加え、一定の要件を満たした場合は前事業年度からの増加額分について、25%の税額控除を受けることができます。税額控除額はその事業年度の調整前の法人税額又は所得税額の20%までが上限です。

従業員の給与支給額アップは、従業員のモチベーションアップや優秀な人材が採用しやすくなるなど、節税面だけでなく事業へも良い影響を与えます。

4. 少額減価償却資産の特例

取得価額が30万円未満の減価償却資産(少額減価償却資産)であれば、即時にその全額を経費として算入することができる制度です。

機械、パソコン、ソフトウェア、中古品など、どのような資産にも利用することが可能です。

購入した時点で全額経費とすることで、その年の事業所得を抑えることができるため、手元の資金確保が容易になります。

5. 中小企業経営強化税制

中小企業等経営強化法の認定を受けた経営力計画に基づき、一定の設備を取得や制作等した場合に、即時償却または取得価格の10%の税額控除(資本金3,000万円超1億円以下の法人は7%)が選択適用できる制度です。

即時償却は、設備を取得・制作した年の売上から取得・制作にかかった費用全額を償却できるため、事業が好調な時に計画的に実施できると、手元の資金確保がしやすくなります。

6. 事業承継税制

特例承認計画の提出、先代経営者要件、後継者要件、対象会社要件、先代経営者以外の株主の要件、5年間の事業継続要件、5年経過後の必要書類の提出の条件を満たすことで、相続税・贈与税の猶予および免除が認められる特例措置です。

中小企業の事業継承を推進していくために設けられた税制で、改正などによって制度の拡充が図られています。

節税となる実際のケース

節税となる実際のケース

上記でご紹介したような制度が、実際にはどのような企業にどのような形で適用されるのでしょうか?

ここでは、2つの事業者の想定ケースを紹介します。実践ベースでの節税対策から、節税対策の具体的なイメージを掴んでいただきたいと思います。

ケースA <給与増額で税金減額>

O社はこの数年業績が好調なため、今年はボーナスを多めに出すことにしました。前年に比べて給与等の支払い総額は500万円アップし、前年度比2%増となります。

税額控除する前の法人税は350万円の場合、税額控除の適用でいくらになるでしょうか?

給与等の支払いが前年度より増加し、増加率も前年度比1.5%以上になっているため、所得拡大促進税制の15%の控除が適用されます。

継続雇用者給与等支給額の増加分500万円 × 15% = 75万円

控除の上限は、税額控除前の法人税額 × 20% なので、350万 × 20% = 70万 となります。

よって控除額は70万円となり、その事業年度の法人税は、350万 – 70万 = 280万円 となります。

ケースB <将来の事業承継に備えた対策と税金>

F社の創業者である太郎さんは、後継者のことはあまり考えていませんでしたが、将来の事業承継を見据えて、株式移転による持株会社を設立しました。

持株会社設立によるメリットは3点あると考えていました。

1点目

親族等が事業継承を行わなくても事業会社を切り離すM&Aが可能になり、不動産等の賃料収入を確保できること。

2点目

株式を保有している以上、後継者が誰になっても実質の経営権は握れること。

3点目

株価が上昇しても、持株会社の「含み益」となるため個人で所有していた場合に比べて株式評価額を引き下げることができ、節税につながること。

しかし、この持株会社が資産管理会社に該当するとみなされた場合、相続税・贈与税の納税猶予および免税の特例は受けることができません。

よって、事業会社自体はうまく引き渡すことができたとしても、持株会社(株式)の相続・贈与の際には一定の条件を満たさない限り、後継者による税金の支払いが発生することになります。

まとめ

中小企業の節税対策として、さまざまな優遇税制の利用が考えられます。

大まかな決まり事や法人全体で共通していることもありますが、節税対策に絶対の解はなく、自社の事業形態、資金繰りのサイクル、投資計画の有無などによっても、節税のために利用すべき制度が変わってきます。

大切なことは、自社のどの点に注目して改善を行うべきかを判断し、それらの改善ポイントの中で取り組む優先順位を決定、実際に改善していくためにどのような方法を採用して制度を有効活用すべきか、を見極めることです。

節税の方法は、自分で探すこともできます。しかし、事業規模が大きくなれば税額の計算が複雑になっていくため、自分の判断だけでは見落としている箇所がある可能性も出てきます。その場合は税理士などの専門家に見てもらうこともお勧めします。

あくまで、税金を支払うことは法人企業としての社会的責任であるという前提の元、適切な範囲で節税対策を行っていきましょう。

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三上諒子

三上諒子

大阪市立大学商学部学士課程修了。学生時代にESG投資の有効性に関する研究を行い、学内の最優秀論文賞受賞。
現在はESG投資における情報開示の重要性に着目し、キャスレーコンサルティング株式会社で企業の社会的インパクト評価のフレームワーク開発に取り組む。
地球のサステナビリティには最終的に消費者の力が必要と考え、消費者行動に影響を与えるファイナンシャルプランナーを目指す。

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