投資信託で思わぬ損をしないためには | メリット・デメリットをFPが解説

投資信託で思わぬ損をしないためには | メリット・デメリットを解説

投資信託の運用のセオリーといえば長期間の積立投資。

ですが、投資信託にはほかにも損するリスクを減らすためのいくつかのポイントがあります。

今回は、投資信託で思わぬ損をしないためのポイントと節税対策について解説します。

この記事ではこんなことがわかります。

  • 投資信託選びのファーストステップ
  • 投資信託のメリット・デメリットと対応策
  • 投資信託の節税対策

投資信託選びのファーストステップ

投資信託選びのファーストステップ

損をしないための第一歩は、投資の目的を明確にすることです。

数多くある情報から自分に合ったファンドを選ぶのは、時間も手間もかかります。

しかし目的を明確にすれば、運用期間や適したファンドタイプがおのずと決まってくるのです。

「老後に備え資産を増やしたい」

そのために、長期保有によるリスク分散のメリットを活かし、リスクは大きいがリターンも期待できる株式投資信託にしよう。

「コンスタントに分配金をもらいたい」

そのために、毎月分配型で利子や配当が多く見込めるファンドにしよう。

など、目的を明確にすることでその目的に合った投資方法や商品を選ぶことができます。

その結果、目的と投資手段のミスマッチを防ぎ、運用効率を向上させることが可能になります。

投資信託 4つのメリット

投資信託 4つのメリット

投資信託による投資には、4つのメリットがあります。

分散投資によるリスクの軽減

そもそも投資信託は、投資の基本である分散投資を主とした金融商品です。

一つのファンドで、国内外の株式や債券に分散して投資・運用してくれるので、現物株などに比べて運用リスクを軽減できます。

投資のプロが運用してくれる

投資信託は、投資家から集めた資金を基に、経済・金融の高い専門知識を持つ運用のプロが資金の管理、運用をしてくれます。

投資信託の運用者は、一般には入手が難しい国内外の経済状況や投資先企業、債券市場などの情報を日々分析し、運用方針に反映させていきます。

ファンド内の資産のリバランスなども運用者が適時実施するため、日々忙しく、こまめに運用状況をチェックできない方におすすめです。

豊富な投資先

投資信託に組み込まれる資産は、国内外の債券や株式、リートなどさまざまです。

個人では売買しにくい新興国の株式や債券に投資できるのも魅力のひとつではないでしょうか。

万が一破綻しても大丈夫

万が一、各機関が破綻しても、投資家が預けたお金(信託財産)は守られる制度になっています。

投資信託は、販売会社(商品の販売、投資家からお金を集める)、運用会社(運用の指図)、信託銀行(お金の管理、売買)という3つの機関で成り立っています。

投資家から集めた資金は、販売会社や運用会社の運転資金とは別に信託銀行で「信託財産」として管理されるため、販売会社や運用会社が破綻しても、影響はありません。

また、信託銀行内でも、信託財産と「信託銀行自身のお金」は区別して管理することが法律で義務付けられています。そのため、信託銀行自体が破綻したとしても信託財産に影響はありません。

なお、信託銀行が破綻した場合、保有している投資信託は「破綻時の基準価格で解約」となりますが、他の信託銀行に移管されればそのまま保有することができます。

投資信託の2つのデメリット

投資信託の2つのデメリットと対応策

投資信託には、当然デメリットも存在します。

デメリットにより思わぬ損を受ける可能性がありますが、きちんと把握し対処することで防ぐこともできます。

元本保証はない

投資信託の投資対象は株や債券です。現物株に比べてリスクが低いとはいえ、預金のように元本が保証されるわけではありません。

投資にはリスクがつきものであることを忘れず、自分が安心できる「リスク許容度」を決めておくと良いでしょう。

「リスク許容度を決める」とは、投資目的や運用期間、全資産における投資資産の割合、投資経験などから、「許容できるリスクとリターンの程度を決めておく」ということです。

リスク許容度を決めることで、大きな損失が生じても精神的にあまり不安定にならず、目標へ向かって継続して投資を続けることが可能です。

特に、ドルコスト平均法の観点からも長期の投資信託は続けることが大切です。

リスク許容度を決めずに焦って途中解約してしまうと、思わぬ損を招いてしまいます。

また、リスク許容度は投資信託の商品を選ぶ際にも欠かせない視点となります。

なぜなら、投資信託は商品ごとにリスクの大小や種類が異なっており、運用を成功させるには自分のリスク許容度に合った商品を選ぶことが大切だからです。

例えば「公社債投資信託のインデックス型」は、価格の変動幅が小さく安定しているので元本割れのリスクは低くなります。

一方、「主に株式で構成された投資信託」や「アクティブ型の投資信託」は、大きなリターンが見込めますが、元本割れのリスクも高くなります。

目論見書の「リスクの説明部分」に必ず目を通し、投資目的に合ったリスク許容度であることを確認しておきましょう。

コスト(手数料)がかかる

投資信託はその仕組みから、購入や運用、換金のタイミングで以下の手数料がかかります。

  • 購入時 「購入時手数料」
  • 保有時 「信託報酬(運用管理費用)」「監査報酬」「売買委託手数料」
  • 換金時 「信託財産留保額」

なお、購入時手数料が発生しない投資信託(ノーロードファンド)や「信託財産留保額」が発生しない投資信託もあります。

「購入時手数料」や「信託財産留保額」が発生するのは購入時と換金時の一回のみですが、「信託報酬」には注意が必要です。

運用報告書の作成や発送、資金の保管など、投資信託における様々な手間賃である「信託報酬」は、投資信託保有中の保有額に応じて日々支払われます。

信託報酬の高いファンドを選ぶと、保有額と投資期間に比例してその額がどんどん大きくなり、気づかぬうちに利益が相殺されてしまう可能性があるのです。

その対策として、ファンド購入前に購入や保有、換金でかかるすべての手数料をチェック、比較しましょう。資料の上では「たった数%」ですが、実際の金額で考えると思った以上の金額になっている場合があります。

すべての手数料は事前に決まっているので予測可能です。

必ずすべての手数料をチェックし、そのファンドを購入してから換金するまでに、手数料がいくらかかるのか、利益を手にするにはどの程度のリターンが必要なのか、確認するようにしましょう。

なお、アクティブ型などのリターンの高い投資信託は、信託報酬も高くなるので、リターンとのバランスに注意しましょう。インデックス型の場合は、同じ指数に連動しているファンドであれば運用成績もほぼ同じになるため、とにかく手数料は最安値を選ぶことが大切です。

投資信託の最大のデメリットともいえる「手数料」ですが、ここは時間をかけてじっくりと見極め、なるべく低コストで運用できるようにしたいですね。

投資信託の4つの節税対策

投資信託の4つの節税対策

投資信託を運用する際、税金対策は見落としがちです。

投資信託のコストには手数料だけでなく税金も含まれ、節税対策をするとしないとでは結果に大きな差が生まれます。

投資信託に投資する際に利用できる、4つの節税対策を挙げました。

換金する回数を減らす  

投資信託で税金が発生するタイミングは「分配金の受け取り時」と「換金時」です。

分配金のタイミングはファンド毎に定められていますが、「換金するタイミング」は自分で決められます。つまり、換金する回数を減らせばそれだけ換金時にかかる税金を減らすことができるのです。

あまり頻繁に換金するのではなく、ここぞというタイミングで計画的に換金しましょう。

損失が出たら、確定申告して損益通算しよう

自分が保有する投資信託に損失が出たら、必ず損益通算するようにしましょう。

損益通算とは、投資信託や株式、債券等の売買で発生した損益をまとめて課税計算することです。

具体例をみてみましょう。

A株式投資信託を売買して50万円の利益が出た一方で、B株式の売買では30万円の損失が出たとします。

損益通算しなければ、課税対象となるのはA株式投資信託の売却益50万円ですが、損益通算すると、売却益50万円から売却損30万円を差し引いた20万円が課税対象となります。

特定口座(源泉徴収あり)を選択している方は、証券会社が損益通算した後に納税までおこなってくれるので、自らの手続きは必要ありません。

ただし、特定口座以外の口座で取引をしていたり、源泉徴収ありの特定口座で取引をしたりしていても複数の証券会社で取引をおこなっている人は注意が必要です。

これらの場合は自分で確定申告をして損益通算をしなければなりません。

もう一つの注意点として、そもそも非課税であるNISA口座との損益通算はできませんのでお気をつけ下さい。

節税に損益通算は欠かせません。損をしたときこそ節税のチャンスと考え、忘れずに手続きするようにしましょう。

3年間の繰越控除を利用する

3年間の繰越控除とは、損益通算をしても控除しきれない損失がある場合、翌年以降、最長3年間に渡って繰り越して損益通算できる制度です。

ただし、この控除を受けるには、損失が出た年の翌年から最大3年間、損失がなくなるまで連続して確定申告をしなければなりません。

その間に取引が一切ない年があっても確定申告は必要なので、忘れないように気をつけましょう。

非課税口座を活用する

すでに多くの方が利用されている、非課税口座のNISAやつみたてNISAですが、令和2年度の税制改正大綱でNISA制度の見直しが発表されました。

つみたてNISAは非課税期間が2042年までと、5年延長されましたまた、現行の一般NISAは2024年から衣替えして2階建ての新NISAとなります。

新NISAは、つみたてNISA(1階)と一般NISA(2階)の合体版のようですが、異なる点が多数あります。

まず、非課税期間は5年間でこれまでと同じですが、投資上限額は一階部分が20万、2階部分は102万円となっています。

また、新NISAの投資対象商品は、一階部分は「つみたてNISAと同じ」ですが、2階部分は現行の一般NISAから「安定した資産形成に不向きな商品」が一部除かれました。

これには、より多くの方に積み立て分散投資による安定した資産形成を促したいという、政府の思惑があるからです。

その他、「2階の非課税枠を利用するには、原則、1階の積み立て投資を行う必要がある」などの決まりもあります。(条件付きで投資経験者は2階のみ使うことも可能です)

新NISAは制度が少々複雑ですが、上手く活用して節税に繋げたいところです。

まとめ

投資信託は投資初心者が長期的に資産運用を行うのに適した商品ですが、その商品選定から運用、換金するまでの間には、

  • 運用効率を向上させる投資目的の決め方
  • 自分のリスク許容度に合った商品の選び方
  • 軽視できない手数料の種類
  • 損失対策にもなる節税ポイント

など、思わぬ損失を防ぐポイントがあることが分かります。

特に、手数料を調べる過程は時間と労力がかかりますが、この労力をかけるか否かが運用結果の差となって返ってくるはずです。 投資信託の基本を押さえ、資産運用の一つとして上手に活用していきましょう。

金井優子

金井優子

兵庫県出身、藤沢市在住。
新しい分野への挑戦が好きで、CA、フリーアナウンサーを経てFPに。
現在は年子男子の育児をしながら、FPとして活動している。
出産後の家計管理に奮闘した経験から、子育て世代に寄り添うFPを目指している。

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