その節税対策意味ないかも!?その法人税の節税効果ありますか?

利益が出ると支払う法人税。納税額をできるだけ少なくしたい、という気持ちは経営者ならだれでもお持ちだと思います。

しかし、税金を少なくすることを目的とするあまり、逆に資産が減っていたという事態になることがあります。

今回は、そのような状況を避けるためにも、3つの節税対策を例に挙げ、本当に必要な設備投資について考えていきます。

この記事では、次の内容をお伝えします。

  • 出費を増やすことは、資産を減らすこと
  • 資産が減ると、事業への投資不足に
  • 節税対策以外の目的を持つことが大事

節税対策その1:将来性のない設備投資は不要

節税対策としてすぐに思いつくのは、出来るだけ経費を計上して利益を少なくすることでしょう。

税金は「収入-費用=利益」の利益によって変わりますから、収入が同じであれば費用が多くなると税金が減ります。そこで、利益が多く出た年に、新しい設備を購入したり、翌年度に購入予定のものを先に購入したりして費用として計上してしまおう、という考え方です。

確かに利益は減りますし税金も下がりますが、おおきな出費を伴っていることに注意しなければなりません。

課税額はいくら減る?

実際の出費のうち、税金を安くできるものは決められており、これを損金といいます。つまり、正確には税金を少なくするためには損金として計上できるものを増やすことが必要です。

では、例を用いて実際の出費と損金の金額をみてみましょう。

5万円のパソコンを購入した場合、出費の5万円を全額損金にすることができます。つまり、利益を5万円減らすことができます。

利益が出たので、このパソコンを6台購入したとします。すると、30万円の出費で、30万円の利益を減らすことができました。

これが設備投資をしたことによる節税対策として想像されるものだと思います。

しかし、設備投資の場合、出費がすべて費用として計上できるわけではない、という注意点があります。高価な設備を購入すると減価償却の対象になり、出費のわりに損金が少なくなってしまうのです。

年度末の4カ月前に200万円の車を購入した場合を考えてみましょう。この場合、減価償却の対象となりますので、法律で決められている耐用年数(6年間)の間、購入費用を耐用年数で割った金額を経費として計上します。

減価償却とは、原則では耐用年数が1年以上かつ10万円以上の固定資産は減価償却資産となることです。高額なパソコンなどもその一例です。

200万円を耐用年数の6年で割ると、年間約33万円です。使用期間が一年に満たない場合は月割りで費用を計上しますので、この例の場合は4か月分の費用(約11万円)しか計上できません。

結局、出費は200万円あったにも関わらず、購入した年度は約11万円しか損金を計上できないのです。

節税効果はどのくらい

では、実際にどのくらい節税できたのでしょう?

例えば、会社の利益が800万円だったとします。そうすると法人税は15%なので、納税額は120万円です。

パソコンの例でみると、30万円利益が減りましたので770万円の利益に税金がかかります。こちらも税率は15%なので、納税額は115万5千円です。税金が4万5千円減りました。

次に車の例です。200万円の出費で損金は約11万円ですので、789万円に税金がかかります。税金は約118万円です。税金は2万円しか減っていません。

さて、実際の資金はどのように変化したでしょう?

設備を購入しない場合・・・

800万円から120万円の税金を払ったので、残りは680万円。

パソコンを買った場合・・・

30万円の出費もありますので、税金を払った後の残りは654.5万円。

車を購入した場合・・・

200万円の出費もありますので、税金を払った後の残りは482万円。

結局、節税対策として設備投資をしなかった方が手元に資金が残っているのです。

もちろん、計画的な設備投資は業務を進めるうえで必要です。しかし、必要以上の設備投資は資金がなくなるだけなのです。

一時的な節税対策ではなく将来を考えた資金運用を

節税対策により税金が少なくなったとしても、資金が大幅に減ってしまっては企業としてリスクが大きくなります。もし、予定されていた入金が滞ってしまった場合に、資金繰りが厳しくなってしまいます。

単に税金を少なくすることを目的とした設備投資を行うよりも、手元に資金を残して事業に活用してはいかがでしょうか?

また、計画的な設備投資を行う場合にも、助成金を使うという方法もあります。国の中小企業向けの補助金は、ミラサポplusのサイトの補助金を探すのページに記載があります。

書類の準備や審査に手間はかかりますが、助成金の認可がおりると国に企業の安全性が認められたことになります。そのため、銀行からの融資が受けやすくなる、というメリットもあります。

節税対策その2:保険の必要性については一考を

役員の退職金や、事業承継時の相続対策として法人向けの保険でお金を準備されている企業もあると思います。保険料を損金として計上し、節税対策もする、という方法です。

では、どのくらい節税できるのでしょうか?

損金になるのはいくら?

法人向けの保険に契約した場合、保険契約の内容により計上の仕方が異なります。損金に計上する金額と資産に計上する金額があります。詳しくは国税庁の保険料のページに記載がありますのでご覧ください。

たとえば、企業にお金が戻ってくる契約であれば、資産に計上した金額も保険期間が終わるまでに全額損金に振り替えることになります。

実際の出費と損金の計上額が異なりますが、最終的には出費全額が損金になります。

節税効果はどのくらい?

保険契約して税金が増減するのは、保険料を払うときと、保険金を受け取るときです。

保険料を支払ったときは、その分利益が減り税金も減ります。

しかし、保険金を受け取ったときにその金額を利益として計上しなくてはなりません。

つまり、保険料の支払いで減らした税金分は保険金の受取時に支払うことになるのです。支払う税金のタイミングが違うだけで、支払う税金の総額は結果として、ほとんど変わらないのです。

条件
・保険料が100万円
・10年間支払い
・支払った分が返金される保険に加入
・10年間で合計1,000万円の利益を削れる*1

*1実際には、会計年度でみると保険料の支払額と損金の計上額は異なります。しかし、保険料を払い終わったときに全額損金になりますので、計算を単純にするために、合計額で比較しています。

保険金を受け取るときをみてみます。支払った保険料が返金される保険ですので、1,000万円受け取ります。この保険金が利益として計上されます。

つまり、損金として計上していた期間安くなった分の税金が、保険金を受け取るときに上乗せされるのです。

実際には、法人税率は利益によって段階的に変わりますから、損金計上していた期間の利益によっては、トータルで税金が安くなったかもしれません。しかし、大枠でほとんど変わらないことがお分かりいただけたと思います。

受け取った保険金を退職金として支払うことによって、保険金受取時の利益をなくしている場合

保険金を退職金として支払えば、企業が保険金を受け取ったときの税金はかかりません。しかし、保険を使用しなかった場合は退職金として支払った1,000万円分税金が安くなります。

この場合は、毎年少しずつ税金を安くするか、退職金を支払ったときに大きく安くするか、その違いでしかないのです。

必要な保険を見極めよう

ケガをしやすい職業に従事する従業員に対する福利厚生の一環のように保険加入に明確な理由がある場合は、万が一の時の保障としてさまざまなニーズに合わせて作られている民間の保険を活用するのも重要です。

一方で、経営者の退職金や事業継承に備えて保険を契約している場合、必ずしも会社の資金を守れるとは言えません。次に挙げるように保険以外の手段もあります。それぞれメリット・デメリットがありますので、企業の目的に合った方法を選ぶことが重要です。

1.小規模企業共済

個人事業主や小規模企業の役員の退職金などの積み立てができる共済です。また、積み立てた共済費をもとに事業資金の借入もできます。

メリット

  • 掛け金は全額損金として計上できる
  • 解約時に受け取る積立金は、個人事業主であれば退職金扱いになるため、企業として税金を納める必要がない。また、退職金なので税金の控除額が大きい。

デメリット

  • 積み立てを240カ月未満で解約した場合は、支払った共済費を下回ってしまう

240ヵ月未満で解約した場合は支払った共済費を下回ってしまうという大きなデメリットがあります。事業がきちんと継続できるかを考えましょう。

2.企業型確定拠出年金

掛け金は企業が負担しますが、運用は個人が行います。

メリット

  • 拠出金は全額損金として計上できる
  • 年金対策として企業の役員も利用することができる
  • 運用益が非課税なので、従業員にも税制面のメリットがある

デメリット

  • 60歳になるまで解約できない
  • 運用次第で年金額が変わる
  • 手数料がかかる

運用を個人で行わなければならないため、年金額が運用次第で変わってくる点は要注意です。
メリットも多いためよく考えて運用しましょう。

3.事業承継補助金

中小企業庁が行っている事業を引き継ぐときや、廃業するときに利用できる補助金です。事業を引き継ぐときに新しい事業を始める場合や、設備投資を行う場合に利用できます。

上限額はありますが、実際にかかった費用の1/2もしくは2/3の金額を受取ることができます。

メリット

  • 補助金を受け取ると、少ない資金で設備投資をすることができ、手元に多くの資金を残すことができる。

デメリット

  • 事前に申請が必要。
  • 補助金の受け取りは設備投資などが終わった後になるため、一度設備代を全額支払う必要がある。

特に事前の申請が必要な点には気を付ける必要があります。
ただし受け取れる金額が大きいため、しっかりと準備をして利用しましょう。

節税対策その3:決算賞与や役員賞与は節税になりづらい

この章では、利益を役員賞与や決算賞与で社員へ還元する場合を考えてみます。

決算時期に支払う賞与を損金として計上するには、以下に挙げる条件を満たす必要があります。

役員賞与の場合

役員に支払う賞与の場合、決められた期間内に「事前確定届出給与に関する届け出」を管轄する税務署に提出することが条件です。

つまり、事前に決めておいて支払うものなので、「利益が出たから払う」は実質上できません。

「事前確定届出給与に関する届け出」は、株式総会議決日から一か月、会計期間開始日の4カ月間、新設法人の役員の場合は設立後2カ月のうちの早い日に、届け出を提出しなければいけません。

決算賞与の場合

従業員に支払う決算賞与の場合は、次の3つの条件を満たしている必要があります。

  • 同時期に支給を受ける全従業員に対して支給額を通知していること。
  • 通知した従業員に、事業年度終了の日の翌日から1か月以内に通知した金額を支払っていること。
  • 通知した事業年度に損金経理をしていること。

1つでも満たしていない条件があった場合は、1円も損金に計上できません。また、税金を安くはできますが、それ以上に賞与として支払う金額が大きいことにも注意が必要です。

なお、決算賞与にも社会保険料や所得税がかかります。所得税は収入によって税率が変わりますので、収入が増えたことにより所得税率が上がってしまう人がいるかもしれません。

その場合、支給額のわりに手取りが増えない可能性もあります。

単純な利益還元だけでなく将来への投資も

利益を従業員に還元することは、従業員のモチベーションアップになります。しかし、賞与により資金が大きく減り、社会保険料の負担も増えます。資金が減るリスクをとる以上のメリットは得られるのでしょうか?

従業員への利益還元という視点では、人材育成に資金を使う方法もあります。仕事に直接必要な研修や資格試験、書籍の購入は経費として計上できます。

また、人を育成することで、税金を抑えながら企業として将来的な収入アップを見込めます。

人材育成に力を入れる事により企業の将来的な利益アップだけでなく、対外的な企業の魅力も向上します。

厚生労働省で人材育成に対する助成金を準備しています。厚生労働省のサイトに各種助成金の一覧がありますので、参考になさってみてください。

まとめ

企業の資金を確保するための方法として、さまざまな節税方法が存在します。

しかし、節税だけを目的にしていると、逆に資産を流出させてしまう結果になることがあります。

企業の本来の目的は、利益を上げ続けること、そして業務を拡大していくことです。 節税以外の方法にも目を向けて、資金を大切に活用してはいかがでしょう。

節税ハック編集部

節税ハック編集部

節税ハックでは、「節税」「投資」に関わるコンテンツを発信しています。
現役FPによる【金融】のコツやテクニックもお届けしていきます。

カテゴリー:
関連記事