【中小企業経営強化税制と即時償却】対象と利用できる設備を徹底解説

中小企業経営強化税制と即時償却

中小企業経営強化税制という制度をご存知でしょうか。

中小企業経営強化税制とは、中小事業者が設備投資を行うことによる、生産力の向上や企業力の強化を手助けする制度です。

具体的にいうと、青色申告書を提出する中小企業者等が指定期間内に経営力向上計画にもとづいて一定の設備を新規取得。その後、指定された事業でその設備を利用すると即時償却、もしくは取得原価の10%の税額控除を受けることができるという制度です。

この記事ではこんなことがわかります。

  • 即時償却とは
  • 即時償却のメリット・デメリット
  • 即時償却が可能な設備・条件

中小企業経営強化税制について

中小企業経営強化税制について

対象となる中小企業者等

中小企業経営強化税制の対象となる「中小企業」とは、以下の条件のいずれかを満たす法人または個人のことを指します。

  1. 資本金または出資金の額が1憶円以下の法人
  2. 資本金または出資金を有しない法人のうち常時使用する従業員数が1,000人以下の法人
  3. 常時使用する従業員数が1,000人以下の個人

指定期間

平成29年4月1日~令和3年3月31日までの期間に取得して使用された設備が対象となっています。

今回は、中小企業経営強化税制の中でも即時償却について詳しく見ていきましょう。

設備投資した金額を取得初年度に一括償却できる「即時償却」

扶養控除を節税につなげるポイント

即時償却は、数年にわたっておこなう減価償却を購入初年度に一括で費用として計上できる制度です。

通常、新たに設備を購入すると設備の耐用年数に応じて、数年にわたって減価償却をおこない、すこしずつ経費に計上していきます。

たとえば、耐用年数10年、1,000万円の機械装置を購入した場合は、10年間にわたって100万円を減価償却費として費用計上していきます。

一方、即時償却は購入初年度に一括で費用計上できるため、設備を購入した年に購入価格1,000万円を減価償却費として費用計上します。

では、この即時償却はどのようなメリットを生むのでしょうか。

メリット(1)経費を前倒しで計上できる

通常の減価償却では、耐用年数に応じて数年にわたって経費計上していきます。

対して即時償却は一括で費用を計上できるので、利益を圧縮することができ、その分支払う税金を少なくすることが可能となります。

メリット(2)節税効果を早い段階で受けることが可能

利益が多く出そうな年に設備投資を行い、即時償却を活用するとその年の税金を抑えることができます。つまり、必要な設備投資を利益が出たときに行い、さらに即時償却を活用することで余計な資金流出を防ぐことができます。

戦略的に即時償却を利用することで、節税効果を早い段階で得られるわけです。

メリット(3)早期にキャッシュを回収できる

即時償却を活用することで、その年に支払う税金を抑えることができ、本来払う予定であったキャッシュを手元に残すことができます。

残ったキャッシュは借入金の返済に充てたり、次の投資を行ったり、将来の不況時に備える資金にしたり等、複数の選択肢を持つことができます。

では、即時償却を活用することによるデメリットはあるのでしょうか。

デメリット(1)節税効果は初年度のみ

即時償却は、費用計上の前倒しなので2年目以降は費用として計上できなくなります。つまり、節税効果は初年度のみにしか得ることができません。

利益が例年より多く出る年に行うなど、活用するタイミングに注意が必要です。

デメリット(2)直接の節税効果はない

即時償却は1年目に全額を経費計上しますが、2年目以降は経費計上ができなくなるためトータルで支払う納税額は変わりません。つまり、即時償却は課税の繰り延べということになります。

即時償却は、利益が多い年に活用しないとあまり効果を発揮しないというわけです。

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対象設備は機械装置・工具・器具備品・建物附属設備・ソフトウェア

対象設備は機械装置・工具・器具備品・建物附属設備・ソフトウェア

即時償却は、基本的には製造や販売に関係している設備であれば対象となります。

建物付属設備には、電気や冷暖房設備等が該当し、ソフトウェアにはテレビ会議や勤怠システムなどが含まれます。

では、対象となる設備の具体的な条件を見ていきましょう。

生産性向上設備(A類型)

生産性が旧モデルと比較して平均1%以上向上する設備です。また設備によって一定以上の金額の設備であり、一定期間内に販売されたモデルである必要があります。

<申請できる設備の種類と要件>

  • 機械装置:160万円以上、10年以内
  • 測定工具及び検査工具:30万円以上、5年以内
  • 器具備品:30万円以上6年以内
  • 建物付属設備:60万円以上14年以内
  • ソフトウェア(情報収集機能及び分析・指示機能を有するもの):70万円以上5年以内

申請者は、以上の条件を満たしているという証明書をメーカーや販売店等を経由して、所属する工業会などから発行してもらいます。

収益力強化設備(B類型)

投資収益率が年平均5%以上の投資計画に係る設備です。また、A類型同様に金額基準も設けられています。

さらに、経済産業局の承認が必要となります。

<申請できる設備の種類と要件>

  • 機械装置:160万円以上
  • 工具:30万円以上
  • 器具備品:30万円以上
  • 建物付属設備:60万円以上
  • ソフトウェア:70万円以上

投資利益率が5%以上という条件については、自社で投資計画を作成する必要があります。また、公認会計士または税理士の事前確認を受ける必要があります。事前確認書は、経済産業局に提出します。

デジタル化設備(C類型)

テレワークを推進するために新たに、対象設備が拡充されました。

具体的には、業務のデジタル化を促進するものが対象で、遠隔操作・可視化・自動制御化のいずれかを可能にする設備が加わりました。

設備の金額基準はA類型、B類型と変わりません。また、遠隔操作・可視化・自動制御化のいずれかを可能にする設備であることを示す確認書を、経済産業局から取得する必要があります。

また、事前に認定経営革新等支援機関に投資計画案の確認をする必要があります。事前確認書を発行してもらい、経済産業局に提出します。

遠隔操作を可能にする設備

事業を非対面で行う、あるいは事業に従事する者が通常出勤している場所以外の場所で業務を行うために遠隔操作を可能にする設備です。

可視化を可能にする設備

データの集約・分析をデジタル技術を用いて行う設備です。ただし、データの集約・分析は、現在行っている事業や事業プロセスに関係するものである必要があります。

さらに、データの集約・分析により、事業プロセスに関する最新の状況を把握し、経営資源等の最適化を行うことができるようにすることも条件となっています。

(参考:中小企業庁中小企業等経営強化法に基づく支援措置活用の手引き」)

経営力向上計画の作成、計画申請・認定を受ける必要がある

即時償却を利用するためには、中小企業経営強化税制の条件に該当する必要があります。その条件の一つが「経営力向上計画」を作成し、生産性向上または収益力強化・デジタル化設備として事業所管大臣に申請し、認定を受けるというものです。

つまり、経営力向上計画の認定を受けてから設備を取得するという流れが原則です。例外として、設備取得後に経営力向上計画を申請する場合は設備取得から60日以内に経営力向上計画が受理される必要があります。

しかし、当該年度を超えて認定を受けると税制の適用は受けることができないので、遅くとも当該設備を取得し事業に使用した年度内に認定を受けなければいけないので注意が必要です。

まとめ

即時償却は、中小企業経営強化税制を利用することで適用が可能な制度です。設備費用の100%を初年度に経費として計上できるので、翌年の税金を大幅に節約することが可能です。

一方、そのような性質から活用するタイミングを見極めることも必要です。

申請には設備を取得する前の計画の認定など事前準備も必要です。

即時償却の活用は時期を見ながら適切に行い有効に活用しましょう。

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庄司里紗

庄司里紗

大学卒業後、広告代理店に営業事務として就職。妊娠を機に退職。専業主婦となり、家計管理を任される。
しかし、子供2人分の教育費、住宅費、老後資金とお金の不安は増えるばかり。
そこでお金について勉強するため2級FP技能士を取得。現在は、子育てをしながらFPとして活動中。

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