【FPが解説!】子どもの教育費、大学卒業までにいくら必要?

子どもの教育費 大学卒業までにいくら必要?

子育てにかかる費用は1,000万円とも2,000万円ともいわれています。

令和元年度の文部科学省の調査では、既卒者を含む大学・短大への進学率は58.1%で、過去最高となっています。

今や2人に1人以上の子どもが大学へ進学する時代。親としても子どもが大学進学を希望するのであれば、その望みを叶えてあげたいものです。

(参照:文部科学省 令和元年度学校基本調査(速報値)の公表について 令和元年8月8日)

しかし、気になるのはやはり教育費のこと。

本記事では、大学卒業までの教育費を見える化し、多くの親がかかえている教育費のモヤモヤを解消していきます。

この記事ではこんなことがわかります

  • 幼稚園から高校卒業までの15年間と、大学4年間の学費にいくらかかるのか
  • 大学4年間で学費以外に必要なお金
  • 家庭の教育費軽減のための国の支援制度について

大学卒業までにかかる教育費用の概算

大学卒業までにかかる教育費用の概算

幼稚園から高校3年生までの15年間でいくらかかる?

まず、幼稚園から高校卒業までの15年間に必要な教育費をみていきましょう。

ひと口に幼稚園から高校までといっても、進学するコースにより教育費は大きく違います。

下表は、幼稚園から高校までの各年代で、保護者が1年間に支出した教育費を示したものです。

(参照:文部科学省 「平成30年度子供の学習費調査の結果について」)

(出典:日本FP協会 FP実務基本データ集)

教育にかかった費用を学習費総額として出していますので、幼稚園や学校へ支払う利用料や授業料の他に、給食費や学校外活動費(部活動、習い事、塾費用など)も含まれています。

このデータを基にして、進路別に幼稚園から高校卒業までの15年間の学習費総額を、以下の6つのパターンでシミュレーションしました。(千円以下は四捨五入)

  • ケース1:すべて公立へ通った場合
  • ケース2:幼稚園のみ私立に通った場合
  • ケース3:高校のみ私立に通った場合
  • ケース4:幼稚園および高校は私立に通った場合
  • ケース5:小学校のみ公立に通った場合
  • ケース6:すべて私立に通った場合

(出所:文部科学省「平成30年度子供の学習費調査の結果について」)

(出典:日本FP協会 FP実務基本データ集)

公立と私立の選択によって、15年間の教育費総額にどのくらい差が出るのか、イメージできると思います。

大学4年間にかかる費用

次に、大学生活にかかる費用についてみてみましょう。

大学の4年間は家計において教育費の割合がもっとも高い時期となります。

場合によっては、高校までの15年間で消費した教育費と同等の額が、大学の4年間で必要になってきます。

理想としては、高校卒業までの教育費は毎月の生活費から支出して、大学入学までにある程度まとまった資金を準備しおきたいところです。そのためには、大学入学時および大学4年間で必要となる金額を把握しておくことが大切です。

下表は、私立大学と国公立大学の4年間の平均的な学費です。

私立大学の学費(学部別)

平成30年度私立大学における授業料等の状況 (単位:円)

  授業料 入学料 施設設備費 実験実習料 その他 合計 (初年度) 4年間合計
文科系学部 785,581 229,997 151,344 9,112 75,005 1,251,039 4,314,165
理科系学部 1,105,616 254,309 185,038 62,862 60,121 1,667,946 5,908,857
医歯系学部 2,867,802 1,073,083 881,509 199,063 1,391,396 6,412,853 22,432,163
その他学部 958,445 258,747 234,644 77,485 89,359 1,618,680 5,698,479

※「4年間合計」は、初年度合計と(初年度合計-入学料)×3年間を足した金額

※「文部科学省 私立大学等の平成30年度入学者に係る学生納付金等調査結果について(資料1)平成30年度私立大学入学者に係る初年度学生納付金平均額(定員1人当たり)の調査結果につい」をもとにFPサテライトにて 2020年12月作成

私立大学は文科系、理科系、医歯系など、学部により学費にかなりの差がみられます。

我が子が文系に進むのか理系志望なのか、遅くとも高校生になれば本人の希望も見えてきますので、できるだけ早い段階から資金計画を立てておきたいものです。

国立大学、公立大学の学費 (単位:円)

  授業料 入学金 初年度合計 4年間合計
国立大学*1 535,800 282,000 817,800 2,425,200
公立大学*2 538,294 394,225 932,519 2,547,401

※「4年間合計」は、初年度合計と授業料×3年間を足した金額

*1国立大学の学費の標準額。ただし、令和元年度から、大学の裁量で授業料と入学金について標準額の120%まで値上げが可能

*2公立大学入学料は地域外からの入学者の平均

※「文部科学省 国公私立大学授業料等の推移」をもとにFPサテライトにて 2020年12月作成

国公立大学についても、別途、実験実習料等の費用はかかりますので注意が必要です。

また、入学前にかかる費用としては、国公立、私立にかかわらず、受験のための検定料、遠方の大学などを受験する場合は交通費、宿泊費などがあげられます。

自宅外から通学をする場合

大学に入学後、自宅を離れて一人暮らしや下宿暮らしをする場合は、学費の他に生活費が必要です。

全国大学生活協同組合連合会が令和元年に全国の国公立および私立大学の学生に実施した「学生の経済状況の調査」によると、51.3%の学生が自宅外(アパート、マンション、下宿など)に居住していることがわかりました。

また、同調査によると大学生の1カ月の生活費は約13万円、そのうち親などからの仕送り額は約7.3万円となっています。月7.3万円の仕送りを4年間続けたとすると、大学の学費の他に約350万円が必要ということになります。

(参照:全国大学生活協同組合連合会 第55回学生生活実態調査 概要報告 2020年2月28日)

さらに、アパートやマンションなどを借りる場合は、初期費用として敷金、礼金が必要な場合がありますので、家賃含めた初期費用として家賃の3ヶ月程度が必要です。

家具、電化製品など生活必需品の購入も考えなければなりません。

進路コース別に必要な教育資金を見積もる

このように教育費を「見える化」することで、大学卒業までの教育資金のイメージが立てやすくなりました。

今回は、以下の3つのケースを想定して、必要額をシミュレーションしてみましょう。

  • ケース1:幼稚園から高校まですべて公立、大学は国立大学で自宅通学の場合
  • ケース2:幼稚園は私立、小学校から高校まで公立、大学が私立文系で自宅外通学の場合
  • ケース3:幼稚園から高校まですべて私立、大学は私立医歯系で自宅外通学の場合

(単位:万円)

費用項目 ケース1 ケース2 ケース3
高校までの教育費用 541 635 1,830
大学でかかる費用 243 431 2,243
仕送り(月7.3万円) 0 350 350
合計 784 1,416 4,423

このように、いろいろなケースを想定してシミュレーションしてみると、おおよその目安がみえてきます。

教育費の負担軽減のための支援策

教育費の負担軽減のための支援策

前章で、大学を卒業するまでにかかる教育費総額について解説してきました。

やはり、教育にはお金がかかるという印象を持たれる方も多いでしょう。

このような状況の中、国は少子化対策の一環で、保護者の教育費を軽減するための支援策、新制度を打ち出しています。

幼児教育・保育の無償化について

令和元年10月よりスタートしたこの制度。3歳~5歳児までの子どもに対し、幼稚園*、保育所、認定こども園等の利用料が無償となりました。

*子ども・子育て支援新制度の対象外の幼稚園においては、月額上限2.57万円まで無償

ただし、無償化といっても3歳~5歳までの教育費が全くかからなくなったわけではありません。無償化になったのは利用料のみで、給食費や入園料、スクールバス費や行事にかかる費用などは実費として支払います。

なお、企業主導型保育事業、幼稚園の預かり保育、認可外保育施設など、利用している保育施設により無償化上限額が違います。また、市区町村から「保育の必要性の認定」を受ける必要があります。

利用している保育施設、利用形態によって無償化の要件が違いますので、お住まいの自治体に確認されることをおすすめします。

(参照:内閣府HP 幼児教育・保育の無償化について知る

高校生のための就学支援金制度

令和2年4月から、就学支援金制度が改正、判定基準の見直しがされたことにより、特に私立高校に通学する場合に支援を受けられる世帯が拡充しました。

具体的には、市町民税の課税算出額に応じて公立高校で年額11.88万円、私立高校で最大39.6万円の支援が受けられます。どちらの金額も高校における平均的な授業料に相当するものであることから、高校授業料の実質無償化ともいわれています。

(参照:文部科学省 私立高校授業料実質無償化がスタート

以下は具体的な判定基準です。

※支給額は、私立高校(全日制)の場合。

※「年収目安」は両親、高校生、中学生の4人家族で、両親の一方が働いている場合の目安

※給与所得以外の収入はないものとし、両親共働きの場合、両親の収入は同額として計算した場合。

(1.の算定式/課税標準額(課税所得額x6%-市町村民税の調整控除の額)

(出典:文部科学省 高等学校就学支援金制度

また、この他にも多くの自治体で独自の基準を設けて就学支援を行っています。

ご自身の世帯が対象となるのか、お住まいの自治体で確認してみましょう。

高等教育の修学支援新制度

経済的にサポートが必要で学習意欲がある学生向けに、高校生向けと同じく令和2年4月より新しい支援制度がスタートしています。(専門学校、高等専門学校、短大も対象)

学生が学業に専念し、学生生活を送るために必要な生活費が支給される「給付型奨学金」と、新たに創設された「授業料等減免制度」の2つで成り立っており、この2つを合算して給付されます。

この制度の対象となる学生は住民税非課税世帯および、それに準ずる世帯の学生です。

1.給付型奨学金

学生生活を送るための生活費として、原則毎月、指定口座に振り込まれます。

大学以外でも、短大、専門学校、高等専門学校が対象で、昼間・夜間制を問いません。

給付型奨学金の給付額 (年額) 

国公立大学 自宅生 約35万円 自宅外生 約80万円
私立大学 自宅生 約46万円 自宅外生 約91万円

2.授業料等減免制度

大学等に納付する授業料と入学金から、それぞれの金額が減免されます。

短大・高等専門学校・専門学校で上限額が違います。また、昼間制と夜間制でも金額が違うため注意が必要です。

授業料減免の上限額 (年額)〈昼間制〉

国公立 私立
入学金 授業料 入学金 授業料
大学 約28万円 約54万円 約26万円 約70万円
短期大学 約17万円 約39万円 約25万円 約62万円

なお、住民税非課税世帯に準ずる世帯の学生は、年収、家族構成の要件により、住民税非課税世帯の学生の2/3または1/3が支援されます。

(参照:文部科学省HP 学びたい気持ちを応援します 高等教育の修学支援新制度

まとめ

日本では少子化に歯止めがかかりません。その要因のひとつに教育費の高騰があげられています。

確かに子ども1人を大学まで出すまでには多額のお金がかかります。

しかし、具体的にいつどれくらいのお金がかかるのかを、平均値として把握しておくことで漠然としていた教育費に対する不安を軽減できるのではないでしょうか。

たとえば、幼児教育から大学卒業までに必要となる資金をイメージできていれば、幼児教育無償化の恩恵にあずかったお金を大学資金のための貯蓄へ回すこともできます。

なお、いくつかの国の支援制度の解説をしましたが、国や自治体の支援制度は基本的に申請が必要です。申請をしないと支援を受けられず、金銭的にしなくていい苦労をすることにもなりかねません。

国や自治体の支援制度を上手に利用しながら、計画的に教育費を準備していきましょう。

山﨑裕佳子

山﨑裕佳子

「通関士」として貿易会社で勤務の後、メーカー、銀行など様々な仕事を経験。
子育てと介護のダブルケアの中で、自分自身のライフプランの変更を余儀なくされる。
経験を役立てたいと思いファイナンシャルプランナーを目指す。
2級FP技能士、AFPを取得。
趣味は読書とランニング。「静と動」でストレスフリーな生活を実践中。
現在は学校司書として勤務しながら、FPとして生活に密着した情報を発信している。

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