【FPが解説!】節税しながら老後の資産形成もできる4つの制度

節税しながら老後の資産形成もできる4つの制度

毎月の給与明細から引かれている税金の多さに驚いている会社員のあなた。

予想以上に売上が増え、支払う税金が増えてしまいそうな個人事業主のあなた。

こんなに税金を払っているのでは貯金ができない、と悩んでいませんか。

この記事では、支払う税金を減らしたいが、同時に老後の生活のために貯蓄もしたい。そう考えている方におすすめしたい4つの制度をご紹介します。

この記事でわかること

  • 節税と老後の資産形成が同時にしやすい理由
  • 節税しながら資産を増やす4つの制度

節税が老後の資金につながる理由

節税が老後の資金につながる理由

老後の生活が心配だから、支払っている税金を減らしてその分を貯金できたらいいのに、と考えている方もいらっしゃるでしょう。

実は、節税と老後の資金づくりはとても密接な関係にあります。

なぜなら、国は国民に対して「医療費や年金の削減への備え」と「老後の資金形成への努力」への協力を要請しており、その見返りとして税金の軽減を提示しているからです。

節税をする際に覚えておきたいこと

節税をする際に覚えておきたいこと

まず、節税を考えるにあたって覚えておきたい言葉が2つあります。

控除非課税です。

控除とは「金銭・数量などを差し引くこと。」、非課税とは「税金が課されないこと。」を意味する言葉です。(引用:デジタル大辞泉)

控除の意図

所得税・住民税は「年間収入」から「控除額」を引いた金額である「課税所得金額」に税率をかけて算出されます。つまり「控除額」を増やせば「課税所得金額」を少なくすることができ、必然的に税額が少なくなります。

例えば、ケガや病気のリスクへの備えには控除がつきもの。社会保険に加入している人には社会保険料控除や医療費控除があります。また、民間の保険に加入している人には、生命保険料控除があります。

このように、控除にはリスクに備えている人に対して、税金を軽減しようという意図があります。

非課税の意図

貯蓄を増やす一つの手段として投資がありますが、もともと投資はお金に余裕がある人がすること、というイメージがありますよね。税法上でも、投資で得た利益に対して20.315%という高い税率が課せられます。

しかし、現在は投資商品を自分の老後資金のために購入するのであれば、利益は非課税にする、という非課税制度があります。また、掛金の全額が所得控除になり、所得税・住民税の支払いを減らすことができる制度もあります。

こういった制度を上手に利用すれば、現在の手取り金額のアップ将来の備えの2つの恩恵を受けることができます。

節税しながら老後の資産形成もできる4つの制度

節税しながら老後の資産形成もできる4つの制度

節税をしながら老後の資産形成もできる制度として、以下の4つの代表的な制度があります。

  • 小規模企業共済
  • 国民年金基金
  • つみたてNISA
  • iDeCo

それぞれ、対象者や仕組み、節税される税金などが異なります。各制度の内容や特徴を理解し、自分に合ったものから取り入れていきましょう。

掛金が全額所得控除となる制度

掛金の全額が所得控除となる制度として、「小規模企業共済」と「国民年金基金」があります。どちらの制度も、対象となるのは厚生年金がなく、将来の備えは自分で準備する必要がある個人事業主です。

小規模企業共済

対象 最低金額 限度額
個人事業主 1,000円 70,000円

自営業の方が自分で退職金を準備することができる制度で、中小企業基盤整備機構が運営しています。預けた掛金は、廃業時や退職時に受け取ることが出来ます。

そして、掛金は老後の備えにつながることから、全額が「小規模企業共済等掛金控除」の対象となります。

控除される金額や廃業時・退職時に受け取れる具体的な金額は、HPでシュミレーションすることが出来ます。

小規模企業共済加入シミュレーション|小規模企業共済(中小機構)

国民年金基金

対象 最低金額 限度額
個人事業主 年齢ごとに異なる 68,000円

国民年金に上乗せして老後に備えることが出来る制度で、全国国民年金基金が運営しています。受け取ることができるのは国民年金保険と同じ65歳からになります。

年金と同じく老後の生活資金の準備であることから、全額が「社会保険料控除」の対象となります。ただし、限度額はiDeCoと合計して68,000円であることに注意しましょう。

掛金や年金の具体的な金額はHPでシュミレーションすることが出来ます。

年金額シミュレーション|全国国民年金基金

運用益が非課税となる制度

投資をして経済を回してくれる人への税制優遇は、運用益の非課税です。

通常、投資商品で得た利益への課税率は20.315%。これが0%になると言い換えると節税効果は大きいですよね。

投資が老後の資金準備という点で効果を発揮する、2つの制度をご紹介します。どちらも個人事業主や、条件を満たしていれば会社員も利用することができます。

つみたてNISA

対象 投資に必要な最低金額 最大限度額
20歳〜60歳までのすべての人 100円 年間40万円

つみたてNISA口座で購入した投資商品(投資信託やETF)の運用益が最長20年間非課税になる制度です。現時点での投資可能期間は2037年12月末日までですが、制度改正により、2024年以降は投資可能期間が2042年12月末日までに延長されることが決まっています。

制度を利用できるのは、20歳〜60歳までのすべての人です。投資に必要な最低金額はほとんどの証券会社で100円から設定されており、少額からでも始めやすい制度です。

通常、投資信託を保有している間の利益として分配金が配布され、税金が引かれます。また、値上がりした商品を売却して得た利益に対しても税金が引かれます。つみたてNISA口座ではこの両方が非課税になります。

同様に運用益が非課税になる制度として一般NISAもありますが、つみたてNISAとの大きな違いは、長期投資を目的とした環境が整っているかどうか、です。つみたてNISAには長い非課税期間と投資商品のラインナップなどが整備されています。

なお、実際に投資できる商品は証券会社ごとに異なります。つみたてNISAを導入している各証券会社のHPで確認してください。

控除と非課税が両方使える制度

運用益が非課税となる二つ目の制度は、先に紹介した所得控除も合わせて適用されるiDeCo(個人型確定拠出年金)です。

iDeCo

対象 最低拠出額 最大限度額
個人事業主・会社員(一部を除く) 5,000円 人により異なる

iDeCo内で購入した投資商品(投資信託)の全額が小規模企業共済掛金控除となり、運用益が非課税となる制度です。

iDeCoは60歳まで引き出すことができないという条件があります。これはiDeCoの目的が老後の生活費の確保であるためです。しかしこの厳しい条件があるからこそ、所得控除と運用益の非課税、両方の恩恵を受けることができるというわけです。

ただし、会社員の方で、勤務先が企業型確定拠出年金に加入しマッチング拠出をしている場合は、iDeCoと同様の効果があるため加入することができません。

また、積立可能年齢は60歳までです。始めるのが遅ければ、積立期間も短くなります。

なお、拠出できる限度額も人によって異なりますので確認が必要です。

イデコの仕組み|個人型確定拠出年金iDeCo【公式】

加入者はどのくらいいるのか?

加入者はどのくらいいるのか?

老後資金の貯蓄がいくら節税になるとはいえ、60歳、65歳まで引き出すことのできないお金を預けることに不安を感じる方や、「老後」という言葉に実感が湧かない方も多いのではないでしょうか。

そこで、4つの制度の加入者数を見てみましょう。

制度名 加入者数
小規模企業共済 約147.5人(令和二年三月末現在)
国民年金基金 約34.8万人(令和元年度末現在)
つみたてNISA 約244万口座(令和2年6月末時点)
iDeCo 約175.6万人(令和2年10月時点)

小規模企業共済と国民年金基金の加入者には、差が大きく開いています。

国民年金の第1号被保険者は1,471万人(平成30年度末)であることから考えると、小規模企業共済は約10%の方が加入していますが、国民年金基金は約2.4%と少数です。

つみたてNISAの加入者を年代別に見ると、30代が26.5%、40代が25.7%となっており、それぞれ全体のおよそ四分の一を占めています。

2020年の新型コロナウイルスによる経済的な不安の中、「NISA口座の新規開設者が増えた」というニュースもありました。投資が少額から可能な点や、開設から運用までネットで完結する手軽さなどによって若年層には扱いやすい制度になっているといえます。

iDeCoは積立期間の年齢制限が設けられていることから、加入者の伸び率は歯止めがかかっています。

加入者のうち、国民年金の第1号・第3号(個人事業主と専業主婦)において、平均掛金の最も多い層は、月額10,000円以下となっています。

節税になる限度額まで使わず、無理をしない範囲で利用している人が多いようです。

まとめ

老後という見えない不安に対処するためには、複数の選択肢を知っておくことが大切です。

制度について知識を持っておくだけで、適切なタイミングで適切な行動を取ることができるようになります。

また、節税になるから今すぐ始めなければならない、と焦る必要はありません。

たしかに利用開始が早ければ早いほど運用期間が長くなり、トータルの節税額は大きくなりますが、少なくとも掛金の払い込みや投資商品の購入のための出費が伴います。

まずは現状の資金状況をしっかりと把握し、生活費を見直し、目処が立ったタイミングで始めるのが良いでしょう。

各ホームページで実際にシミュレーションをすることが出来ますので、一度試してみてください。

荒木莉乃

荒木莉乃

フリーランスとして活動中、お金の知識の乏しさを痛感しFP3級を取得。
結婚後、夫婦共々保険や不動産のガツガツした人に弱く、上手く話に乗せられやすい性格であることを実感。
家計を守るためにFP2級、AFPを取得。
現在は複業在宅ワーカーとして、FPサテライト株式会社で活動している。

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