高収入な人ほど要注意!?老後の備えは計画的に

高収入な人ほど要注意!?老後の備えは計画的に

老後に生活が困窮する状態を「老後貧乏」と表現することがあります。

今、年収が1,000万円〜2,000万円程あり、ゆとりのある生活を送っている人の中には、「自分には関係ない」という人もいるかもしれません。

しかし、今高収入な人ほど、きちんと計画性をもって老後資金を準備しておかなければ、「老後貧乏」に陥る可能性が高いのです。

この記事では、

  • 高収入な人ほど計画性が必要な理由
  • 老後のための貯蓄目標額の算出方法
  • 老後に備えて今しておくべきこと

について解説します。

なぜ高収入な人ほど計画性が必要なのか

なぜ高収入な人ほど計画性が必要なのか

要因1 老後も続く高い生活水準

現役時代に高収入を得ていると、自身でも気づかないうちに周囲と比べても高い生活水準で過ごしていることが往々にしてあります。

しかし、生活水準というのは老後になり収入が減ったからといって、急に変えることはできません。

それでは、高収入世帯と一般的な収入世帯とで、老後の生活費はどの程度変わるのか、比べてみましょう。

まず、現役時代の年収が1500万円以上ある世帯の老後生活費の目安を見ていきましょう。総務省の家計調査をもとに算出すると、現役世代の年収が1500万円以上の世帯の老後生活費は、1ヶ月あたり約42.2万円となります。

計算の根拠は以下を参照してください。

年収1,500万円以上の世帯における1ヶ月の平均消費支出は約56万円

夫婦で老後を過ごす生活費は「現役時代の約70%」を目安とするので、
56万円✖️  70% =39.2万円。

そこに税金や社会保険料の非消費支出(約3万円)を加えて、約42.2万円

参考:総務省「2019家計調査年報 > 1世帯あたり1ヶ月の収入と支出 >年間収入階級別
https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&layout=datalist&toukei=00200561&tstat=000000330001&cycle=7&year=20190&month=0&tclass1=0000003

一方、夫65歳以上、妻60歳以上の高齢無職世帯の平均支出は1ヶ月約28万円(消費支出25万円+税・社会保険料3万円)です。

参考:総務省「2019家計調査年報 > 1世帯あたり1ヶ月の収入と支出 >(高齢者のいる世帯)世帯主の就業状態別>高齢夫婦世帯(夫65歳以上、妻60歳以上の無職世帯)

https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&layout=datalist&toukei=00200561&tstat=000000330001&cycle=7&year=20190&month=0&tclass1=0000003

ここから、現在高収入を得ている世帯の老後は、平均世帯の約1.5倍の生活費がかかるということがわかります。

この数字はあくまで生活費に関してのみで、レジャーや余暇活動などを含めると更にその差は大きくなるでしょう。

現在高収入な世帯の方は、これらを念頭において老後資金を貯める必要があるのです。

要因2 老後収入の認識不足

老後の生活は基本的に、収入(年金等)より生活費の方が多い赤字家計となり「年金を軸に、足りない分を貯蓄から取り崩して生活する」ことが一般的となります。

ここで注意すべきは、「現収入が多ければ多いほど、老後にもらえる年金が多くなる訳ではない」ということです。

年金には、職務や身分の区別なく保険料納付期間によって支給額が異なる「基礎年金」と、会社員や公務員がもらえる「厚生年金」があります。

この厚生年金の支給額は、在職中の平均年収(月給+賞与)÷12である「平均標準報酬額」をもとに計算されます。

「平均標準報酬額」は2020年10月現在、月給(標準報酬月額)の上限は65万円賞与(標準賞与額)は支給1回あたり上限150万円と決まっています。

この上限金額を年収に換算すると約1,080万円です。(賞与は年2回と仮定して計算しています)

つまり、年収1,500万円でも2,000万円でも、もらえる年金額は一緒ということになります。

現役時代の高い生活水準を保ったままの暮らしを続け、思っていたよりも年金が入ってこないとなると、老後生活が破綻してしまうことになりかねません。

大切なのは、老後の収入と支出を把握し、必要な貯蓄目標額を定め、計画性をもって準備しておくことです。

老後のための貯蓄目標額の算出 5つのステップ

老後のための貯蓄目標額の算出 5つのステップ

安心して老後を過ごすための目標額は、「老後に使うお金の総額」から「老後にもらえる収入の総額」を差し引いて求めます。

具体的な5つのステップを、Hさん夫婦を例に確認しましょう。

Hさん(45歳)プロフィール

・昭和50年(1975年)生まれ
・年収2,000万円。22歳で大手証券会社に就職、60歳で退職予定。
・厚生年金、国民年金共に38年加入予定
・妻43歳(専業主婦、60歳までに国民年金に35年間加入予定)
・長男(20歳、未婚)
・持ち家、戸建(住宅ローン支払済)
・生活費 月額60万円
・定年(60歳)までの貯蓄見込み額 1,800万円

ステップ1  夫婦2人の生活資金の計算

現役時代の生活水準と夫定年時の平均余命をもとに、夫婦2人で過ごす老後期間の生活資金としていくら必要か、を見積もります。

老後の夫婦の生活資金は、現役時代の70%を目安とします。

Hさんの場合(夫84歳、妻は95歳まで生きると仮定)

現役時代の年間生活費720万円 × 70% × 夫定年時の平均余命24年=1億2,096万円

参考:厚生労働省/令和元年簡易生命表(男性・女性)https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/life/life19/index.html

ステップ2 妻1人の生活資金を計算

夫が死亡した後に、妻が1人で平均余命まで生活する期間の生活費は、現役時代の50%を目安とします。

Hさんの場合

現役時代の年間生活費720万円 × 50% × 夫死亡時(84歳)の妻の平均余命11年=3,960万円

ステップ3 その他必要資金を計算

住宅ローン残高、リフォーム費、レジャー・余暇活動資金や、結婚資金の援助金など、生活資金以外でまとまって必要になる資金を見積もります。

Hさんの場合

・リフォーム費      650万円
・レジャー、余暇活動資金 400万円
・予備費         500万円
・結婚資金援助金     300万円  
          合計:1,850万円

ステップ4   収入見込額を計算

公的年金、退職金、預貯金などの老後収入を見積もります。

老齢厚生年金の計算方法は、2003年4月以降に総報酬制が導入された関係で、「導入前」と「導入後」を分けて計算しなければなりません。しかし、「ねんきんネット」で試算すると、条件を変えてシミュレーションすることもでき便利です。

今回は、参考のため計算式を載せています。

Hさんの場合(すべて1万円以下は切り捨てて計算を行っています。)

Hさんの老齢基礎年金
781,700円(令和2年4月以降の満額)×(456月(保険料納付済月数)÷  480月(加入可能月数)) =742,615円 ≒ 74万円
74万円 × 19年(65歳〜84歳) = 1,406万円(A)
Hさんの老齢厚生年金
・平均標準報酬月額は最高額の65万円、平均標準報酬額(月給+賞与の平均)は90万円で計算

・2003年3月までの加入月数は72月、2003年4月以降の加入月数は384月
65万円 ×( 7.125 ÷ 1000 )  × 72月    =333,450円
90万円 ×( 5.841 ÷ 1000 )× 384月 =2,018,650円
333,450円+2,018,650円 = 2,352,100円 ≒ 235万円
235万円 × 19年 = 4,465万円  (B)

・妻が65歳未満の間、加給年金が加算 一律390,900円/年
 390,900円 × 2年=781,800円 ≒78万円 (C)  

(A)+(B)+(C)=5,949万円
Hさん(妻)の老齢基礎年金
781,700円 × (420月 ÷ 480月) =683,988円 ≒ 68万円
68万円 × 30年 (65歳〜95歳)=2040万円                                                                                                    
公的年金合計 : 5,949万円+2,040万円=7,989万円
退職金 : 2,000万円
自己資産 : 1,800万円
収入見込額合計 : 1億1,789万円

ステップ5  老後資金の不足額を算出

老後資金の不足額=貯蓄目標額です。

老後の支出見込額(ステップ1〜ステップ3)から老後の収入見込額(ステップ4)を差し引いて、老後資金の不足額の目安を算出します。

Hさんの場合

(1億2,096万円+3,960万円+1,850万円)- 1億1,789万円= 6,117万円

よって、Hさんの老後資金の貯蓄目標額は「6,117万円」となります。

老後に備えて今すべきこと

老後に備えて今すべきこと

目標額が決まったら、とにかく早い段階で行動をおこしましょう。

老後資金を貯める方法には、「預貯金」や「資産運用」「保険の活用」などがあります。

なかでも「つみたてNISA」や「個人型確定拠出年金(ideco)」の制度を活用して貯めるなら、早目に始めた方がいいでしょう。

運用期間が長ければ長いほど複利効果を得て効率的に貯めることができます。

個人事業主の場合の注意点

個人事業主の場合の注意点

個人事業主の場合、もらえる年金は「基礎年金のみ」で退職金もありません。

定年がないのでいくつになっても働くことはできますが、「病気になるリスク」や「事業が継続できないリスク」も考慮して、資金を準備しておかなければなりません。

個人事業主の方がリスクに備える方法として、個人事業主や会社役員のための退職金制度である「小規模企業共済」があります。

月々1000円〜70,000円まで自由に掛金を設定でき、退職時や廃業時にその掛金額や納付月数などに応じた共済金を受け取ることができます。

また、この制度のメリットとして、掛金が全額所得控除できるため高い節税効果が得られる点や、契約者は低金利の貸付制度を利用できる点があります。

老後の資金対策になり、かつ、万一の資金不足にも備えられるため、個人事業主の方にとってとても魅力的な制度といえるでしょう。

まとめ

現在高収入な人は、「老後も高い生活水準が見込まれること」や「現収入と老後収入の振り幅が大きいこと」から、より計画性をもって老後資金を貯める必要があります。

この対策として今すべきことは、

  • 老後資金の目標額を把握
  • つみたてNISAやideco、小規模企業共済などの制度を活用し、即時実行にうつす

この2点です。

老後資金の貯蓄目標額の算出には少し手間がかかるかもしれませんが、具体的な数字を知ることこそ「老後貧乏」に陥らないための第一歩です。

安心して豊かな老後生活をおくるため、少したちどまって老後について考えみてはいかがでしょうか。

金井優子

金井優子

兵庫県出身、藤沢市在住。
新しい分野への挑戦が好きで、CA、フリーアナウンサーを経てFPに。
現在は年子男子の育児をしながら、FPとして活動している。
出産後の家計管理に奮闘した経験から、子育て世代に寄り添うFPを目指している。

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