美術品を購入した場合、経費計上できるのかどうか疑問に思ったことはありませんか?
会社のロビーや受付、店舗、廊下などに飾る美術品であれば、経費として計上することが可能です。ただし、金額によっては減価償却が必要なものや、経費計上できないものがあります。
この記事では、美術品を購入した場合の経費処理について解説します。減価償却の対象となる美術品の基準についても解説しているので、美術品を購入した、または購入予定がある場合はぜひご参照ください。
目次
美術品は経費計上できる?

社内のホールや受付、廊下、店舗などに飾る目的の美術品については、2015年1月1日以降に取得したものであれば取得金額を経費計上することが可能です。販売目的で購入した場合は、原価として経費計上できます。
美術品の取得金額には、美術品のみでなく以下のものも含まれます。
- 美術品の運搬費用
- 購入手数料
- 額縁や箱などの付属品
1点あたりの取得金額が30万円以上100万円未満の美術品は、減価償却による経費計上が必要です。
会社に飾る目的で購入した美術品の減価償却

会社のホールや店舗に飾る目的で購入した美術品は、減価償却して経費計上することが可能ですが、取得金額によって処理が異なります。
美術品の取得金額と減価償却については、以下の3つのパターンに分かれています。
- 取得金額が30万円未満の場合
- 取得金額が30万円以上100万円未満の場合
- 取得金額が100万円以上の場合
また、取得金額だけでなく、「時の経過による価値の減少が明らか」な場合にのみ減価償却することが可能です。
減価償却できる美術品とそうでない美術品について、以下より解説します。
取得金額が30万円未満の場合
取得金額が30万円未満の美術品は、300万円を上限として全額をその年に経費計上できます。
ただし、経費計上できる企業については、以下の条件があります。
- 資本金1億円以下の中小企業、または個人事業主
- 青色申告をしている場合
取得金額が30万円以上100万円未満の場合
取得金額が30万円以上100万円未満の場合は、美術品の耐用年数に応じて減価償却しながら経費計上します。
耐用年数の基準は、以下の通りです。
- 室内装飾品のうち主として金属製のもの(金属製の彫刻など):15年
- 他のもの(絵画、陶磁器、金属製以外の彫刻など):8年
取得金額が100万円以上の場合
取得金額が100万円以上の美術品は、経費として計上はできず、非減価償却資産として扱います。美術品を売却したり廃棄したりした場合には、取得金額を経費計上することが可能です。
時の経過によって価値の減少が明らかな場合は、取得金額が100万円以上の美術品であっても減価償却することが可能です。
どのような場合に「時の経過によって価値の減少が明らか」となるかについては、次の章で解説します。
減価償却できるのは時の経過による価値の減少が明らかなもののみ

減価償却できる美術品は、「時の経過によりその価値が減少することが明らかなもの」に限られます。
たとえば、以下のような美術品が該当します。
- 会館のロビーや葬祭場のホールのような不特定多数の者が利用する場所の装飾用や展示用(有料で公開するものを除く)
- 移設することが困難で当該用途にのみ使用されることが明らかなもの
- 他の用途に転用すると仮定した場合にその設置状況や使用状況から見て美術品等としての市場価値が見込まれないもの
出典:「法人税基本通達の制定について」(法令解釈通達)ほか2件の一部改正(案)(時の経過により価値の減少しない資産の範囲の見直し)に対する意見公募手続の実施について
上記の条件を満たせば、取得金額が100万円以上の美術品も減価償却が可能です。
ただし、古文書や古美術品、出土品といった代替不可能で希少性の高いものは、取得金額が100万円未満であっても減価償却することはできません。
2014年12月31日より前に取得した美術品の場合
取得金額が100万円以下の美術品が減価償却できるようになったのは、2015年1月1日から施行されている税法の改正によるものです。
2014年12月31日より以前に取得した美術品については、改正前の以下の要件に従って減価償却を判断します。
美術年鑑などに作者が掲載されているか
- 掲載されている:経費計上(減価償却)できない
- 掲載されていない:経費計上(減価償却)できる
取得金額が1点につき20万円(絵画は号あたり2万円)以上のもの
- 20万円以上:経費計上(減価償却)できない
- 20万円以下:経費計上(減価償却)できる
まとめ
会社に飾る美術品を購入した場合は経費計上することが可能ですが、取得金額が30万円以上100万円未満の場合は美術品の耐用年数に応じて減価償却が必要です。また、100万円以上の美術品や、希少性の高い美術品は経費計上できないので注意が必要です。
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