世界的広がりを見せて、日本でも多くの企業の注目を集め始めたウェルビーイング経営。
近年、企業への評価は売上や業績だけでなく、会社のあり方や社会的貢献度によっても、大きく左右されるようになっています。
この記事では、ウェルビーイング経営とはどんなものなのか、言葉の意味や期待できるメリットから、自社に取り入れる際は具体的にどう始めればいいのかまで解説しましょう。
- ウェルビーイング経営とは
- ウェルビーイング経営のメリット
- 企業ができるウェルビーイング経営の取り組み
目次
ウェルビーイング経営とは

最初にウェルビーイングという言葉の意味とその始まり、さらにウェルビーイング経営とはどのようなものを指すのか、定義から確認しておきましょう。
ウェルビーイング
「ウェルビーイング(well-being)」とは、健康や幸福という意味の言葉です。人間の健康を基本的人権のひとつとして捉え、実現を目指す世界保健機関(WHO)では、その憲章の中で以下のように謳っています。
「健康とは、肉体的・精神的・社会的に完全な幸福(well-being)の状態であり、単に病気や虚弱がないことではありません」
つまり、身体が健康であるだけではなく、精神的にも幸せを感じ、社会的にも認められたり人間関係が良好であったりと、すべてにおいて満たされている状態を、健康であり幸福である=ウェルビーイングな状態である、ということです。
ウェルビーイング経営
ウェルビーイング経営とは、「社員ひとりひとりが肉体的・精神的・社会的に満たされていれば、企業活動にも良い影響が出る」という考えに基づく経営手法です。
ウェルビーイング経営では、職場環境を整えて従業員の働く意欲とエンゲージメントを高めることで、結果的に企業の業績も上がり成長できると考えます。「関わるすべての人が幸せになれる企業」を目指す、経営手法です。
ウェルビーイング経営のメリット

ウェルビーイング経営を行うことによるメリットは、数多くあります。ここでは、代表的な4つをご紹介しましょう。
従業員のエンゲージメントの向上
従業員が心身ともに健康に、人間関係や労働時間も含めて働きやすい環境を整えると、ストレスなく働くことができるようになります。
会社への愛着を高め、「この会社のために働きたい」、「貢献したい」、という前向きな気持ちを引き出し、仕事に対するモチベーションやパフォーマンスも上がるでしょう。
離職率の低下
従業員の幸福度は、給与などの待遇面だけでは決まりません。
ストレスなく働ける職場と人間関係に愛着を持ち、あらゆる面で幸福を感じられる環境であれば、長く働き続けたいという従業員が増えるため、離職率も低下します。
生産性の向上
心身ともに健康で意欲の高い従業員が増えれば、企業全体の生産性が向上します。
遅刻・欠勤や休職といった勤怠の問題も減り、従業員同士の人間関係やコミュニケーションもスムーズになるでしょう。
働くことに幸福を感じている社員は、そうでない社員に比べ、創造性で3倍、生産性でも3割高くなるという研究もあるほどです。同じ就業時間・従業員数でも、業務の効率アップと生産性の向上が期待できます。
企業価値の向上
近年のSDGsの広がりを始め、企業評価の価値観は変化しています。
企業は売上・業績だけでなく、社会貢献や労働者の権利保護といった面でも評価を受けるようになりました。
ウェルビーイング経営の実施は、従業員にとって働きやすいだけでなく、企業のブランドイメージを高めます。
また、採用市場でも、働く従業員が生き生きとしていれば求職者から見ても魅力的に映るため、優秀な人材を確保しやすくなるでしょう。
企業ができるウェルビーイング経営の具体的な取り組み

ウェルビーイング経営を実行するにあたって、企業にできる具体的な取り組みとはどのようなものでしょうか。ここでは、3つの点から解説します。
健康増進の福利厚生を増やす
社員がパフォーマンスを十分に発揮できるよう、心身の健康を増進できる福利厚生を増やしましょう。
身体のメンテナンスのために健康診断を実施することは基本として、予防接種の機会やワクチン休暇も求められることが多くなりました。
フィットネス機器の設置やジムとの提携などといった運動機会の提供や、精神の健康のためのストレスチェック、産業医への相談窓口を設けるのも良いでしょう。
労働環境を見直す
長時間労働や、社内カレンダーにおける休日に出勤しなければならない状況があれば、是正が望まれます。
有給休暇や産休・育休の取得しやすい雰囲気づくりや、仕事に合わせて労働時間のフレックスやリモートワークを取り入れるなど、従業員が柔軟に働けるよう労働環境を見直すと良いでしょう。
コミュニケーションが取りやすい環境を作る
人間関係が良い職場では、従業員の幸福度が高まります。個人が安心して発言しやすい環境であれば、自由な意見が活発に交わされて、従業員それぞれの視点からのユニークなアイディアも出やすくなるでしょう。
また、ザイオンスの法則(単純接触効果)では、接触時間の長さよりも回数の多さが、相手に親近感を湧かせ好感度を高めると言われています。
相手の作業を止めずに声を掛けやすいチャットツールなら、気軽で短時間に数多くのやりとりが可能ですから、コミュニケーションの機会も増やせて、おすすめの方法です。
リモートワークなら、文字だけでなく、お互いの顔が見えるビデオ通話も合わせて取り入れると良いでしょう。
ウェルビーイング経営を取り入れて、関わる人が幸せになれる企業へ
肉体的・精神的・社会的に満たされて働ける職場環境を整えることで、従業員の幸福度やエンゲージメントを高めることのできるウェルビーイング経営。
自発的に会社に貢献しようと働く従業員が増えれば、「生産性を向上させたい」、「離職防止して質の高い人材を確保したい」という企業の課題も解決が期待できます。
関わる全ての人が幸せになり企業価値も高めるウェルビーイングを、経営に取り入れてみてはいかがでしょうか。