資産運用は若いうちから始めるべき?

資産運用は若いうちから始めるべき?

ひと昔前は、資産運用といえば「富裕層やまとまった資金を持っている人がするもの」というイメージでした。

しかし、インターネットの普及や金融商品の売買手数料が安くなった影響もあり、現在では少額から資産運用を始めることができます。

今回は、資産運用は若いうちから始めるべきか否かについて、資産運用を始めようか悩んでいる20代・30代の若い世代向けに解説します。

この記事ではこんなことがわかります。

  • 資産運用の必要性
  • 若いうちから資産運用を始めるメリット・デメリット
  • 資産運用の始め方

資産運用の必要性

資産運用の必要性

資産運用はした方が良さそうだけれど、よく分からないしなんだか怖い、と思っている方も多いかもしれません。

まずは、資産運用の必要性について確認していきましょう。

貯金でお金が増える時代は終わった

1990年前後は、現在の普通預金の金利0.002%と比べてとても高い金利水準でした。

日本中がバブル経済といわれ株式や不動産価格が高騰し、銀行の預金金利も最高値で6%台だったのです。

預けた元本が12年で2倍になった、という成功体験をしている親世代は「資産運用はリスクがあるから貯蓄をしなさい」と勧めるかもしれません。

もちろん貯蓄も大事ですが、現在の金利水準を考えると100万円預けても1年で20円(税引き前)しか増えません。

そのため、お金を増やそうと思ったら、収入を上げるか、支出を下げるか、資産運用をして増やすかという選択肢になります。

若者を取り巻く社会情勢の変化

親世代と違い、若者を取り巻く社会情勢も大きく変化しています。

超低金利時代

先ほども触れたように、日本はマイナス金利の導入で現在は銀行に預金しても年率の金利は0.002%です。お金を借りる場合は低金利だと安く借りられて良いですが、逆にお金を預けてもなかなか増えません。

社会保険料の負担増や増税

健康保険料と厚生年金として払っている社会保険料は年々増加傾向であり、手取り収入が減っている原因になっています。また、消費税も導入当初は3%でしたが、段階的に引き上げられ現在は10%と負担が増えています。

インターネットの普及で資産運用のハードルが低下

金融商品の注文は、ひと昔前なら証券会社の店頭や電話で取引をしていました。ですが、現在はインターネットの普及もあり、パソコンやスマホで簡単に取引できるようになりました。人を介さないので取引コストも下がり、株式や投資信託の売買手数料も安くなったため、資産運用のハードルは年々低下しています。

また、金額も少額から投資できるようになりました。取り扱い会社にもよりますが、投資信託は100円から積み立て可能で、株式も1,000円から購入できるところもあります。

資産運用にかかる非課税制度の拡大

2014年に始まった少額投資非課税制度である「NISA(ニーサ)」は、株式や投資信託を売却した際に得た利益にかかる譲渡所得が非課税になる制度です。

他にも、個人型確定拠出年金(通称iDeCo)という自分が拠出した掛け金を自分で運用し資産形成をする私的年金制度もあります。iDeCoは、拠出時や運用時、受け取り時に税制優遇がある制度です。

資産運用にかかる非課税制度は拡大傾向で、その恩恵について詳しくは後述します。

若いうちから資産運用を始めるメリット・デメリット

若いうちから資産運用を始めるメリット・デメリット

資産運用の必要性を考えてみると、若いうちから資産運用を始める気持ちになったかもしれません。しかし、メリット・デメリットともにあるので両方を確認してから始めましょう。

メリット

まずはメリットから確認しましょう。

時間を味方につけられる

若者の財産は、なんといっても人生の残り時間の多さです。「時間を味方につけられる」ことが最大のメリットではないでしょうか。資産運用の基本は、「長期・積立・分散」です。若いうちから少額でも資産運用を始めれば、長期でこつこつ積立投資をすることが可能です。

1回の積立する金額は少額でも、長期間継続することでリスクを軽減させる効果があります。また、利子に対して利子がついていく複利効果も期待できます。

自分のビジネスに役立つ

資産運用をすることで、経済情報に興味を持てるようになります。インターネットでの情報収集が容易になった今では、投資のハードルが低く始めやすくなりました。

経済についての知識があると、ビジネスの世界で優位に立つことができます。もし将来、起業したいと思い立ったとき、身に付けた経済知識が非常に役に立ってくれるでしょう。特に株式投資などは企業研究を通じて自分のビジネスにもヒントになり役立つことでしょう。

ライフイベントを考えるきっかけになる

なんのために資産運用をするのか考える際に、目的となるのがライフイベントに関連することではないでしょうか。家の購入・教育費・老後資金など人生には多額のお金が必要になるライフイベントが多くあります。

特に老後資金は「老後2,000万円問題」ともいわれた金融庁の金融審議会の市場ワーキンググループの報告書が話題になりました。報告書にあるように、平均寿命の延びた日本人は年金以外にも自助努力で老後資金を備えておかないと大変である、という危機感を持つきっかけになりました。

低金利や伸び悩む所得、社会保険料の負担などがあり、年金と貯金だけで老後に備えようとすると大変です。不足分を補うためにも資産運用の力が改めて注目されています。このように、資産運用がライフイベントについて考えるきっかけにもなります。

デメリット

資産運用にはデメリットもあります。

資産運用に資金を回す分、使えるお金が減る

今あるお金から資産運用に回す分を取り分けるため、どうしても今現在で使えるお金は減ることになります。今しかできないスキルアップなどの「自己投資」や旅行などに回せる資金はその分限られます。

うまく資産が増えない可能性もある

資産運用にはリスクが伴うため、必ず資産が増えるとは限りません。景気の波や投資対象の業績も右肩上がりが続くことは考え難く、短期目線の資産運用では、特に増やすのが難しくなるでしょう。

投資詐欺にご用心

「楽してすぐに儲けられる」・「絶対儲かる」などを謳う勧誘は、投資詐欺の可能性が高いです。なぜなら、資産運用に「絶対」も「楽してすぐに儲かる」もないからです。近年、SNSで知り合った人や知人・友人などから耳ざわりの良い投資話を持ち掛けられる詐欺が横行しているので、気をつけてください。

資産運用の始め方

資産運用の始め方

資産運用を始めようと決めたら、どのように始めたらいいか順を追って解説していきます。

現金で緊急予備資金を用意しよう

まずは、資産運用を始める前にある程度の緊急予備資金を用意しましょう。生活に困らないように、もしもの時に備えておきたいお金のことを緊急予備資金といいます。目安は生活費の3か月分になります。

生活のための予備資金が貯まったら余裕資金で資産運用を始めるという流れが理想的です。ですが、緊急予備資金を貯めながら平行して資産運用を始めたい場合は、運用に回す額を少額にして始めてもいいでしょう。

資産運用の基本は「長期・積立・分散」

資産運用の基本は「長期・積立・分散」になります。それぞれの内容について解説します。

長期

資産運用において長期とは、決まった定義はないですが最低でも5年以上を指します。じっくりと資産形成するために長期にわたって資産運用を継続することが大切です。株式や投資信託などの金融商品は、数年単位だと値段の上がり下がりが激しいため、リスクが大きくなります。

リスクとは値段の振れ幅のことで、数年単位だと値段のブレが大きいのでリスクは大きくなります。一方、年数が長くなればなるほど値段のブレ幅が小さくなっていきリスクは小さくなります。

例えば毎日の気温を思い浮かべてください。どの地域・季節でも暑い日や寒い日がありますが、長期間で統計をとってみるとある程度の範囲に収まっています。この温度の散らばりが投資におけるリスク(振れ幅)だと思ってください。

また、複利効果も長期になればなるほど増大するので長期で資産運用することが基本になります。

積立

積立投資は、自分が決めたタイミングでこつこつと定期的に金融商品を購入していく方法です。積立には「定額購入」と「定量購入」があります。特に毎月決まった金額を購入する定額購入は「ドル・コスト平均法」とも呼ばれ、リスクを減らす効果があります。

「ドル・コスト平均法」は、一括で金融商品を購入するのではなく、毎月決まった額を購入する方法です。金融商品の値段が安い時はたくさんの口数を、値段が高い時は少な目の口数を購入することになるので、結果として購入価格が平均化されます。

分散

分散は、投資対象の時期や地域、資産などを分散させることで意図的に価格変動によるリスクを抑える方法です。リスクコントロールと安定したリターンを狙うことが目的です。

時期の分散:ドル・コスト平均法

地域の分散:国内外や、海外でも先進国や新興国などのように、複数の地域や通貨に分散させること

資産の分散:株式・債券・投資信託など、特徴が異なる金融商品に分散させること

まずは積立投資を始めてみる

資産運用の基本を押さえたところで、取り組みやすい積立投資から始めてみるのがいいでしょう。

非課税制度の活用

積立投資を始めるにあたり、非課税制度を利用すると税金の負担が少なくなります。非課税制度の代表的なものに「つみたてNISA」と「個人型確定拠出年金(iDeCo)」があります。

つみたてNISA

譲渡益が非課税になる制度で、非課税期間は最長20年。年間の非課税投資枠の上限が40万円です。長期の積立に適した一定の投資信託を積立方式で購入する方式です。

個人型確定拠出年金(iDeCo)

60歳以降に資金が引き出しできる、主に老後資金を目的とした非課税制度。拠出時や運用時、受け取り時に税制優遇がある制度です。投資対象は投資信託・保険・定期預金から選ぶことができます。

これらの制度のどちらか、または両方をフル活用して非課税制度の恩恵を受けながら資産運用をすることが可能です。

※勤務先で企業型確定拠出年金制度が導入されている場合はiDeCoの利用は原則できません。

それぞれの制度で、非課税期間や上限金額、投資対象商品、払い出し制限など細かい点が違いますので、まずは自分にとって使い勝手のよい制度から始めてみましょう。

リスクとリターンを考えて商品を選ぶ

商品選びの前に、自分が求めるリターンを考えます。希望するリターンを得るにはどのくらいのリスクをとる必要があるのかを調べましょう。

基本的に、預貯金が一番リスクもリターンも低く、債券・投資信託・株式の順にリスクもリターンも高くなります。

高いリターンを求めると、リスクも高まりますし、リスクを低く抑えようとするとリターンも低くなります。

このように、リスクとリターンは比例しているので、自分がどれだけリスクを許容できるのかを考えて商品を選びましょう。

資産運用を通じて自分の感情と向き合う

いよいよ資産運用を始めることができたら、値段の上下で自分がどのような気持ちになるか向き合ってみましょう。慣れないうちは一喜一憂するかもしれませんし、値段が急落したら狼狽して売りたくなってしまうかもしれません。

もし、一喜一憂することが続くようなら、自分が許容できないリスクを取りすぎている可能性があるので、運用内容を再考する必要があります。

しかし、積立投資なら値段が上がっても下がってもこつこつ継続して積立することがとても大切です。購入価格が平均化することで、負けにくくなるからです。

まとめ

ひと昔前とは変わって金利が低く、また社会保険料などの負担が大きくなっています。以前と比べて手取り収入が低くなった現在では、資産運用の必要性が高いことがおわかりいただけたでしょうか。

またインターネット上での投資も簡単になったことから、非課税制度も積極的に利用していきたいですね。

さらに、資産運用は若いうちから始めると、時間を味方につけるという最大のメリットを活かすことができます。

そして、資産運用はスポーツと似て、いくら勉強したり動画を見たりして研究しても、実際手や体、そして頭を動かして実践してみないと上達しません。

資産運用を始めるべきか否か悩んでいるなら、まずは始めてみて自分がどう感じるか実践してみてはいかがでしょうか。若いうちから始めれば、複利効果で投資の果実が多く実るかもしれませんね。

田端沙織

田端沙織

鎌倉市出身、逗子市在住。2男1女を育児中。
大学を卒業後、FP2級を取得した際、資産運用の楽しさに開眼し証券会社に勤務。
10年以上お客様にまごころ込めて対応していたが、会社とお客様の向いている方向が違う事にモヤモヤを感じる。
現在は、お客様と自分が同じ方向を向くことでお金や将来の不安が少しでも減るよう、中立的な立場のFPとして活動中。
また、「キッズ・マネー・ステーション認定講師」として子供、親子向け金融教育講座を開催している。

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